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京都府後期高齢者医療広域連合議会

●●2012年夏(2011年度の決算)の議会(8月24日)

No.5

一般質問「後期高齢者医療広域連合と京都府の連携の在り方に関する検討会報告書について」
 
  先日、資料として「後期高齢者医療広域連合と京都府の連携の在り方等に関する検討会報告書」という文書を頂いていますので、私はこれについて質問します。
 まずこの検討会の性格と目的、恐らく府の諮問機関だろうかと思われますが、京都府との関係について明らかにされたい。またこれを受けて府自身はどのようにお考えなのか、6月以降の変化があるのかどうか、更に、この報告書では、「京都府の、広域連合への参加に向けて市町村や広域連合等と協議する場を設け、早急に協議調整を行うことを期待する」とのことですが、この点に関し、本広域連合に既に何らかの話があったのかあるのか、協議調整とやらのいきさつはどうなのか、まずこの辺りの経過について明らかにされたい。
 一般的に後期高齢者医療広域連合への都道府県の加入についてですが、この点について、高齢者医療確保法では、第48条で「市町村は、後期高齢者医療の事務を処理するため、都道府県の区域ごとに当該区域内のすべての市町村が加入する後期高齢者医療広域連合を設けるものとする。」となっており、この法文からは、都道府県が加入するには法改正が必要であると思われますが、一方、検討会報告書ではP5にて、「制度上、都道府県の参加は可能である」と書かれています。この辺りはどう解釈すればいいんでしょう。また報告書はそれに続いて、「広域連合の規約改正について、全市町村議会と都道府県議会の議決が必要」等とも書かれていますが、広域連合自身の議会の議決は要らないのでしょうか。この箇所についても私には疑問が残ります。
 もっとも、このような手続きは別として、私は、都道府県の加入については、一般論としてはいろいろな角度からの議論が可能だと思いますが、今回の検討会報告書では、単に広域連合の一構成団体として加わるというにというに留まらず、独自の目的と明確な意図をもって加入を目指すとされています。即ち、「国保の都道府県単位での一元化を目指すうえで、都道府県単位の医療保険の運営に都道府県が参画する効果を実証し国保の一元化に向けた動きを加速させられるように、云々」と書かれています。私は国保の広域化・一元化については賛成できませんので、従ってそれを促進するためにと位置付けられているのなら、京都府の本広域連合への参加についても賛成できません。しかも本報告書では保険料収納対策、保険給付適正化等について、府が参画して責任と権限をもって企画立案や意志決定に関わっていくとの趣旨のことが書かれています。保険料収納も各市町村でやっておりますし、保険給付も今以上にどう適正化するというのかよく分かりません。本来、広域連合を構成する各自治体は対等平等であるはずですが、この部分の表現は、何か府が特別の責任と権限を持っておられるかのような印象を受ける書き方になっています。
 国保の広域化に賛成できない理由の第一は、その旗を振っている政府自身が、広域化に伴って、現行の各市町村の一般会計繰入を減らす、やめると言っていますし、また私の属する京都市でも、広域化一元化しても従来通りの繰入を続ける、とは明言されない、逆に言えば減らす・無くす方向を示唆されているからであります。政府の広域化支援方針では、「一般会計繰入は、保険料の引き上げ、収納率の向上、医療費適正化の推進等により、早期に解消するよう努めること」と、広域化に伴って繰入をなくすというよりもむしろ、なくすために広域化するとの明確な目的意識をもって方針化しています。
 第二に、京都市の場合、国保の一元化のみならず、すべての健康保険の一本化を目指していますが、職域保険も含めた都道府県単位の一本化ということになれば、財界の事業主負担を免れたいという年来の主張に格好の口実を提供することに通じるのではないかと危惧されるからであります。即ち、全体として市町村繰入も事業主の負担も減らされたり無くされたりという方向に至るのではないか、そうすると、その影響が、保険料大幅値上げなど、住民や被保険者・患者・労働者にしわ寄せされることは十分に考えられることであります。しかもこれが都道府県単位の運営とされれば、各都道府県間での医療費抑制競争が強いられるとともに、ますます国の財政的責任の後退が加速することになるのではないでしょうか。すでに協会けんぽは、かつては政府管掌でしたが、今では都道府県毎に保険料も異なっているのであります。
 第三に、今日の国保の危機と言われるものの最大の原因は、国が必要な財政責任を果たしていないことであり、この点に的を絞って声を挙げなければならないのに、一元化とか一本化とかを掲げることによって、結局この課題を曖昧にし、結果として政府の責任を免罪しているからであります。仮に一元化しても一本化しても、国や大企業が本来の社会保障への財政責任を果たさないままではうまくいかないことは必至であり、結局それは国民相互間でのやりくりの域を出ないことは明らかです。今でも後期高齢者医療保険への支援金が国保料や社会保険料が高い一因ですし、またこの支援金のために、全国的には健保組合の解散などが相次いでいるのであります。京都府で言えば一番被保険者数の多い京都市で赤字を抱えている通り、保険単位の大小、被保険者の多い少ないと赤字黒字とは必ずしもリンクしておりません。規模を大きくすれば運営がマシになるというのは事実でもないし、また結局、府民国民同士の相互扶助の規模を大きくするだけの話でしかありません。
 第四に、国民健康保険は保健医療活動・予防活動などと相まって、また保険料納付相談なども含め、身近な市町村で運営するのが、地域住民にとっても、より安心できるのではないかと思うからであります。だからこそ歴史的にも市町村が担ってきたのであって、この仕組みを今すぐに変えなければならない理由は無いと考えます。
 賛成できない五番目の理由は、一元化広域化が、単に保険者をひとつにして保険単位を大きくするというに留まらず、保険給付適正化と称する医療給付費抑制策とセットになっているからであります。京都府広域化等支援方針には「一元化し、府がその運営に参画することにより…医療提供体制、医療保険、健康推進等の保健医療政策全般の一体的運用ができる体制を構築し、医療機能強化に取り組むとともに、医療費の効率化、…」等々と書かれていますが、この方向は、医療提供体制の縮小や保険の運用・医療費の管理等、もっと幅広い総合的なルートを通じて医療給付費削減策を進めていこうとするものに他なりません。政府の削減策とも軌を一にし、しかもこれを先取りしたものであります。
 再び質問に返りますが、以上の通り、いろいろ懸念される点の少なくない、こういった国保の一元化ということについて、連合長は基本的にどうお考えでしょうか。また国保の府単位の運営ということであれば、その保険者は誰が担うとお考えなんでしょうか。京都市では、その点はまだ未定との答弁ですが、いずれにせよ京都府か本広域連合のどちらかが想定されているとしか考えられません。そうすると、これは本広域連合にとっても大きな議論になるのは必至ではありませんか。ものの順序から言えば、こういう心配や総合的な制度の在り方への検討抜きに、一元化との話だけが先行し、もしかすると当事者になるかも知れない本広域連合での議論も何もないままに、京都府だけで、一路話が突き進むことには、率直に言って疑問を禁じ得ないところであります。
 以上、「広域連合と府の連携の在り方等に関する検討会報告書」を元に質問させて頂きました。総括的に、経過及び連合長のご見解を明らかにされますよう求めまして質問を終わります。


2012年第2回京都府後期高齢者医療保険広域連合議会での2011年度特別会計歳入歳出決算に対する不認定討論

  暮らしにかかわる市民の皆さんからのご相談が絶えません。とりわけ、医療や介護、生活保護など、社会保障・社会福祉に関するご相談が増えています。後期高齢者医療に関するものだけでも、例えばあるご婦人の例では、被保険者の医療機関窓口での一部負担金について、ご自身だけの所得なら一割負担で済むのに、夫に、昨年、基準を僅かに超えるだけの収入があったため、それに引きづられて3割になるというお話でした。また、別の事例では、やはり女性の被保険者の方ですが、保険料について、所得割も掛からないほど低い年金なのに、均等割の減額がされていない。そこでいろいろ区役所と相談してみますと、どうやら昨年まで同居されておられた世帯主の子どもさんが転出届けを出されたのが今年の4月1日以降になってしまっていたということが判明し、現行制度のもとでは、これまた仕方がないということで、来年度になれば少しは減額できますよと言うしかありませんでした。この方の場合は、同じ理由によって、介護保険料もまた一段階高くなってしまっています。転居した時に転居届けの手続きをしておけばよかっただけで自己責任だと言えばそれまでですが、ではこの場合、世帯主を最初から子どもさんではなく被保険者本人にしておけば、子どもさんの転居に関わりなく減額が実現していました。まことにこんな制度設計でいいのだろうかということを考えた時、当面の改善策としては、私は前者の例も含め、被保険者個人の所得を基準にすればこのようなことは起こらないと思いますが如何でしょうか。社会保険なら被扶養者の仕組みがありますし国保でも均等割があるとはいえ、世帯を単位としての保険料になっているのに、後期高齢者医療では、すべて個人の単位で保険料を払わなければなりません。そのくせ、今挙げた事例のように、その保険料は家族を含めて計算する訳ですから、まことにご都合主義と言わなければなりません。本当に高い一部負担金や保険料を何とかしてほしいというご相談は切実です。
 元々、後期高齢者医療保険の元になっている高齢者医療確保法は、法自身の目的に「医療費の適正化の推進」を掲げるなど、特に高齢者の医療給付費削減、公費負担抑制の要として位置付けられてきました。年齢で区分し、その範囲の中で社会保障原理ではなく保険原理を徹底し、医療費と保険料をリンクさせれば、保険料が高くなっていくのは必至ですが、そもそもから本制度はそういう目的をもってつくられてきました。発足当時、厚生労働省の担当者が「医療費が上がっていく痛みを自分の感覚で感じて頂く仕組みにした」と講演で述べた話しはよく知られている通りであります。しかも保険料だけでなく、療養病床の削減や在院日数の短縮、差別医療を持ち込む独自の診療報酬、制度発足前にはなかった資格証明書の制度化、等々、必要で充分な医療提供の縮小、ひいては被保険者の側から言えば医療を受ける権利を縮小してまで、適正化の名による医療費削減が推し進められています。というより、ハナからそういう意図と目的をもってつくられてきたのが高齢者医療制度ですから、この制度を創った自民党時代と今や全く変わらない民主党政権にとって、
保険料や一部負担金が高くなっていくのは当然の成り行きであって、最初から織り込み済みのことなのでしょう。
 私は、相談事例から出発して本制度のそもそもについて考えてみましたが、残念ながら、連合長提出の2011年度特別会計決算には、主要施策の成果説明書も含め、私の指摘したような観点は全く皆無であります。せめて政府に対し、たとえ部分的であれ、批判的な声を挙げるべきであります。いかに国の制度とはいえ、被保険者・患者、府民に、高い保険料と一部負担金、受診抑制を押しつけてきた結果責任を、私はよしとするわけにはいきません。これが認定できない理由であります。以上、討論を終わります。


「『社会保障制度改革推進法』の撤回を求める請願」案件に対する賛成討論

  私は、只今上程されております、請願第2号「『社会保障制度改革推進法』の撤回を国に求める意見書の提出に関する請願書」について、これを採択すべきとの立場から討論を行います。
 周知の通り、憲法25条では、国民の健康で文化的な生活を営む権利を明らかにするとともに、「国は…社会保障…の向上及び増進に努めなければならない」と謳っています。社会保障制度改革推進法は、自助努力・自己責任、家族・国民間での相互扶助を強調することによって、この国民の権利を否定し国の責任を放棄するもので、戦後の社会保障の歴史と蓄積を台無しにする天下の悪法であります。
 私は、未だ可決される前の法案の段階でしたが、6月25日に発表されました、日本弁護士連合会の会長声明を紹介して、皆さんのご賛同をお願いしたいと思います。
 会長声明は次のように述べておられます。「国の責任を、『家族相互及び国民相互の助け合いの仕組み』を通じた個人の自立の支援に矮小化するものであり、国による生存権保障及び社会保障制度の理念そのものを否定するに等しく、憲法25条に抵触するおそれがある。」。「年金・医療・介護の主たる財源を国民が負担する社会保険料に求め、国と地方の負担については補助的・限定的なものと位置付けており、大幅に公費負担の割合を低下させることが懸念される。」。「また法案は、社会保障給付に要する公費負担の費用は、消費税及び地方消費税の収入を充てるものとするとしているが、財源の確保は、憲法13条、14条、25条、29条などから導かれる応能負担原則の下、所得際配分や資産課税の強化等の担税力のあるところからなされなければならない。」等々。
 元々、この法律は、今年の初め以来の、政府の一体改革関連法案の中にもなかったもので、通常国会の本来の会期末であった6月21日に突然提案され、公聴会や参考人意見陳述もないどころか、ろくろく審議もないまま僅か5日後の6月26日に衆議院を通過するという、前代未聞の強引なやり方で参議院へ送られたものでした。参議院でもまともな審議抜きで、お盆前のどさくさにまぎれて消費税増税法案などとともに強引に可決されたことはご承知の通りであります。内容もとんでもないものですが、手続きもまた大問題だと言わなければなりません。本広域連合議会の総意をもって採択し、政府と国会に届けることができますよう、ご賛同を求めて、賛成討論とします。