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京都府後期高齢者医療広域連合議会

2013年第2回定例会(12年度決算)=8月23日

No.7

一般質問

京都府後期高齢者医療広域連合議会
第2回定例会一般質問       2013/8/23 井上けんじ
 
 政府の社会保障制度改革国民会議は、今月6日、首相に報告書を提出、これを受けて内閣は、その具体化の手順である「プログラム法案」の骨子を閣議決定、秋の臨時国会に提出の予定といわれています。私は、この報告書や政府の対応に、批判的な声を挙げられるよう連合長に求めるものであります。認識についてご答弁願います。
 報告の内容は年金支給額の値下げや介護保険の保険給付範囲の縮小、利用料値上げ、さらに前期高齢者の医療窓口一部負担金の1割から2割への値上げ等々、後期高齢者の暮らしや介護にとっても重大な内容が含まれており、しかも、一部財界団体からは、前期高齢者一部負担金値上げを後期高齢者にも連動・拡大させたいとの意向も打ち出されるなど、直接間接に、後期高齢者医療保険の今後にとっても重大な影響と関連のある方向となっています。また同報告では、最期をみとる「病院完結型」から「地域完結型」へ、即ち医療提供体制の構造的な改革と称し、在院日数の短縮、早期家庭復帰を実現すると強調しています。早期退院を迫られ、入院難民の増加が危惧され、これは後期高齢者にとっても直接的に重大な悪影響となるものです。
 これらの経過と内容については、例えば「京都新聞」でも、8月2日付、3日付と、連続で「社保改革波高し」「高齢者に応分負担要求、介護保険では軽度者切り離し、実現なら生活打撃」等々と批判的に紹介されている通りであります。更に昨日22日付の報道では、自民党の会議での「国民は痛みを感じ、話が違うと思うのではないか」との発言、また公明党のある議員が「給付抑制策ばかりでは困る」とこぼした、等と書かれています。
 特に私が怒りを禁じ得ないのは、同国民会議会長名で、「国民へのメッセージ」と題し、消費税を甘んじて受け容れろと国民に説教を垂れていることであります。そもそも、消費税を社会保障に充てるのなら、なぜ消費税増税とこんな社会保障改悪がセットになって出てくるのでしょうか。歴史的に言っても、消費税導入以降、むしろ社会保障は保険料値上げと給付縮小の踏んだり蹴ったりの改悪の連続でした。消費税導入当初の加藤税調会長が、「実際は社会保障に使わないが、そう言った方が分かり易いから」と週刊誌で発言されておられたのは有名な話ですが、今や社会保障に使われているわけではないというのは国民的実感です。そればかりではありません。社会保障費が増えるから財政危機だ、だから消費税だと、まことしやかに語られますが、実際、統計を調べてみますと、消費税導入及び3〜5%への増税の頃から今日までの15年間の国と地方の税収は逆に14兆円も減っています。即ち1996年度と2010年度とを比べてみますと、確かに消費税収入は7.6兆円から12.7兆円に増えていますが、法人税は23.3兆円から14.8兆円へ、所得税・住民税は28兆円から24.5兆円、その他の税収入も31兆円から24兆円へと減っています。消費税収の増加分以上に法人税・所得税・住民税のマイナス分が大きく、差引減収となっているのであります。その理由は第一に消費税導入による景気の悪化と勤労者の賃下げ、第二に消費税と抱き合わせの大企業大資産家への行き過ぎた減税だと言われています。資本金10億円以上の大企業の内部留保は266兆円と言われていますが、結局、この資金が内需冷え込みで設備投資にも向かわず、またその成果を生み出したのが下請け中小企業や勤労者であるにもかかわらず、これらの人たちや社会に全然還元されていないところに、消費税の問題が国民・業者の暮らしと営業を脅かすだけでなく、却って景気悪化の要因にもなっている、日本の税収構造を歪んだものにしているというわけであります。今や、国の税収に占める消費税の割合は21%に対し法人税は8%にしか過ぎません。今は成長していない国になっていますが、仮にもし景気が回復しても、その成果は税収増には結びつかない税構造になりつつあるのが現状です。これでは、今後の一層の消費増税は必至ではありませんか。ますます需要が冷え込んでますます景気が悪くなる悪循環は必至であはありませんか。
 更に統計を調べますと、社会保障の財源のひとつである社会保険料の落ち込みも最近の大きな特徴です。簡単に言って、大企業のリストラ・労働者の非正規化が、労働者を職域保険から排除していることが、その要因です。
 従って、労働者の正規職員化、労働者や中小企業の底上げで国民の購買力向上で売買の活発化で景気回復、更に大企業や大資産家への行き過ぎた減税の是正、能力に応じた負担等々、改善すべき方向は多方面にあるのに、消費税だけにしか目が行かないのは、まことに思考停止状態であると言わなければなりません。保険料アップと給付縮小で狭義のやらずぶったくり、社会保障改悪と消費税増税で広義のやらずぶったくり、これが老人福祉法で言うところの「敬愛されるとともに、…健全で安らかな生活を保障されるものとする」はずの高齢者に対する、政府のプレゼントなのでしょうか。
 高齢者が安心して医療にかかれ、安心して余生を過ごしていただけるよう、連合長は、こんなひどい国民会議報告とプログラム法案を具体化しないよう声を挙げ、政府に働きかけるべきです。如何ですか、この点についてお答え下さい。
 また同報告では、現在、市町村で運営されている国民健康保険について、これを都道府県の運営に切り替える方針が打ち出されています。これについては、私は、昨年来、各市町村の繰入金が減らされあるいはなくされ、その結果、保険料の大幅値上げに連動すること、住民にとって保険者がますます縁遠くなり予防や公衆衛生・地域保健活動にとってもマイナスとなること等々の理由を挙げて反対の立場を明らかにしてきました。この点については、連合長のご見解とともに、もしそうなった場合、本広域連合も何らかの組織的関連が出てくるのか、影響を受けるのか、この点の見通しについても合わせてお答え願いたい。
 ここで、今、私が、国保運営の都道府県化への一般的なご見解だけでなく、広域連合とのかかわりについても質問した理由と経過について、新しい連合長のために紹介しておきますと、私は昨年の夏も今年の2月にも、本議会において、この問題について次のように質問してきました。それは、「京都府が広域連合への加入をめざし懇談や協議をされておられるが、私も直ちに賛成とも反対とも言えないし、その可否についてはいろいろな角度からの議論が可能だろうけれども、府が加入されたい理由として国保の都道府県への一元化の促進を挙げておられるのなら賛成できない」というものでした。そこで、先ほど言いました国保一元化反対の理由をもっと詳しく列挙して質問させて頂いたという次第でありました。そんな経過ですから、政府の国民会議の報告についてだけでなく、我が広域連合との関連についても合わせてお答え頂きますよう、よろしくお願い致します。
 さてその際、私は、以上の通り、我が広域連合の組織の在り方にとっても重大な関連のある問題であるから、府との懇談や協議の内容については、定期なり随時なり、議会にもご報告願いたいと要望しておきましたが、少なくとも私の知る限り、今年の1月29日に懇談会、そしてつい先日8月5日には推進協議会なる会合が開かれているにもかかわらず、何らのご報告もありません。議会は一年365日のうち、僅か2~3日しか開会されませんから、まずきょうは最近の経過をご報告頂くとともに、今後は議会開催の有無にかかわらず、府との協議その他の経過について、その都度、をご報告いただきたい。この点についても答弁を求めます。
 更に私にとって疑問なのは、以上、紹介した1月と8月の会合で本広域連合の副広域連合長に副知事が就任との方針が打ち出されていることであります。常識的に言って、広域連合の役員や議会の議員は、広域連合を構成している各団体から選出されるべきではありませんか。機能的に権限の大小があったり地理的に重なっていたり、京都市内に府立高校や府立図書館や府警本部があったりなど、日常的に経験していることでありますが、京都府と府内各市町村とは、団体としては対等平等であり、それは広域連合にとっても同じことであります。広域連合の役員を誰にするかは、専ら広域連合の自治に属することであって、広域連合自身が決めることであろうかと思います。このあたりについてもご見解をお伺いしたいので答弁を求めます。
 さて、以上のような国保の都道府県化や京都府との協議会、人事等々に関しての私の今ひとつ総括的な疑問は、道州制との関係についてであります。知事も京都市長も、程度の差はあれ、道州制推進或いは研究をされたりしておられる。滋賀県との合併も、とのご発言もありました。そうすると京都府は、将来どうなるのでしょうか。常識的には道州制になれば都道府県は無くなると言われておりますが、一方で国保は府でやる、広域連合にも入る、他方でしかし府は無くなるかも知れないでは、結局、私たち広域連合もそういう動きに振り回されるのではありませんか。念のために言いますが、私は道州制には断固反対でありまして、私自身も京都市民であるとともに京都府民ですから、京都府が府民の福祉向上の為に自治体としての役割を発揮してもらいたいと願っている立場であるからこそ、以上のような疑問がついて離れない訳であります。これについても連合長のお考えをお聞きしたい。
 最後に、一部負担金の負担が軽くないというご相談が少なくありませんので、この点について質問します。現行の減免制度では災害や干ばつ等、特別の事由にしか適用されないことになっています。まして事業の休廃止や失業、長期入院による収入の減少など、就業していることを前提とした、ごく一般的な規定でしかありません。被保険者の大多数は年金が主たる、または唯一の収入源だと思われますが、その年金自身が生活ギリギリの水準で、京都市でいえば、国民年金は平均で月5万3千円でしかありません。ましてこれから2.5%の値下げが待っています。消費税が上がり、介護保険料が上がり、政府自身が物価値上げを目標として掲げています。しかも預貯金が生活保護基準額の3倍迄とは言っても、その基準額自体が、引き下げられているのであります。私は、収入が一定額以下の場合にも対象にすることや資産要件を緩和することなど、高齢者世帯の生活実態に合わせた減免制度の拡充が必要と考えます。これについてもご答弁を求め、質問を終わります。



京都府後期高齢者医療保険広域連合議会第2回定例会
意見書提案趣旨説明
                2013/8/23  井上けんじ

 私は、すでに提案させて頂いている「環太平洋経済連携協定(TPP)に参加しないように求める意見書(案)」の趣旨について説明します。
 TPPの医療への影響については、混合診療の解禁、経済格差が医療格差に繋がる、公的保険の縮小と民間保険会社などの営利の対象部分の拡大、更に株式会社の病院参入によって安全よりコスト削減が優先される危惧、等々、様々な角度からその問題点が指摘されています。
 同時に、内容とともに、その手続きや仕組みも問題だらけです。まず政府は「守るべきものは守る」と言いますが、その担保は何もありません。例外なしというのがTPPの原則です。もっと問題なのは、ラチェット条項と呼ばれる「後戻りできない」仕組みです。更にISD条項と呼ばれる紛争処理のあり方も問題です。これは例えば米国の保険会社が、日本の皆保険制度が商売の邪魔になると思えば、日本が訴えられかねないという代物です。加えて、もっと大問題なのは、こんな国の将来を左右する大切な協定なのに、「秘密協定」をタテに、その交渉の経過が国民には全く知らされないままで進められていることであります。
 今でも、保険料や一部負担金が高くなる反面、保険のきかない部分の拡大、給付範囲の縮小、医療提供体制の縮小・弱体化等々、健康保険制度の危機が深まっていますが、TPPへの参加は、これらとは比較にならない、日本の優れた医療の仕組みの質的・根本的な改変・崩壊に至るでしょう。後期高齢者医療制度も例外ではあり得ません。
 農業関係者や医療関係者など、各分野・各地域で、今、大きな世論と運動が広がっています。これらの動きと連帯し、TPP反対の一点で力を合わせましょう。是非本議会でも意見書を可決し、政府に声を挙げるよう呼びかけ、提案とします。