トップ > 議会論戦トップ > 本会議討論 トップ > 2009年03月

本会議討論

2009年度国民健康保険・介護保険特別会計等に対する反対討論

No.14

 日本共産党は、議第3号「2009年度国民健康保険事業特別会計予算案」、議第4号「2009年度介護保険事業特別会計予算案」、及び議第67号「国民健康保険条例の一部改正案」につきまして、いずれも、反対の態度を明らかにしておりますので、私は、それぞれ、その理由について発言し、討論を行います。
 まず国民健康保険についてでありますが、総額約10億円、家族の人数や所得によっては年間約5万円もの値上げになる場合もあるなど、大幅な保険料値上げ案となっています。
 第一に、今、未曾有の経済危機の中で、売上げが十分の一に落ちた、仕事が全く来なくなったなどの声が渦巻いています。京都市国保の被保険者の中で労働者は2割を超えていますが、低賃金・不安定雇用化・リストラ・首切りなど、所得の落ち込んだ世帯の、国保へのいっそうの移行も予測されます。自営業者もそうですが、被保険者の生活基盤そのものが危機に瀕しています。今日、緊急の雇用や融資など、不十分ながら経済危機への対策も採られつつありますが、国保についても、この際、緊急措置として今回の値上げ案を撤回する、棚上げする、そういう手を打つべきだと考えます。それでなくとも、ここ数年、自民党公明党政府のもとで、各種控除の廃止や縮小、年金受給額の値下げ、そして営業の不振など、収入が落ち込むのに、税金や保険料など支出が増えています。その上での今日の経済危機ですから、重ねて市長の英断を求めるものであります。
 第二に、国保のそもそも論と、特に今日の現状から言っても値上げを認めるわけにはいきません。
 まず、市長や理事者は社会保険だから保険料で賄うのが当然とのお考えですが、これは底の浅い見方であります。特に戦後の国保は、国民の生存権に立脚した社会保障制度の一環として、そもそも自助でも互助でも解決できない問題への対処として生まれ、発展してきたもので、だからこそ、現行の国民健康保険法でも「社会保障及び国民保健の向上に寄与する。国は運営が健全に行われるように努めなければならない」と謳っているのであります。
 現状は如何でしょうか。事業主負担がないことは周知の通りでありますし、また本市国保の被保険者は、無職者・年金生活者が63・8%も占めています。所得から33万円を引いた所得割基礎額0の世帯が45%、この世帯も含めて200万以下が86.6%も占め、これで一体どうして市長の言うように助け合えるのでしょうか。何らかの滞納世帯がすでに20%を超えていること自体が、最早払えない世帯が特殊な事例ではないことの証明です。この構造的な問題という診断を正しく下したうえでそれに見合った処方箋が必要ではないでしょうか。大幅な公費投入は必然であり不可欠だと考えます。
 第三に、本市の独自努力は如何でしょうか。一般会計繰入に努力しているとのことですが、繰入には国からの財源が含まれているものもありますから区別が必要です。市長はもっと独自努力をすべきです。特に昨年度から来年度にかけて言えば、07年度までの市民健診が政府の医療改悪で特定健診になって各保険者に任され、一般会計で賄われていた健診の予算が国保の負担になったことが影響しています。予防と早期発見が大切であることは当然ですが、このことと健診の費用負担とは別の問題です。07年度までの一般会計の市民健診費用約10億円が08年度以降削減されていますが、この健診費用を被保険者に押しつける前に、この分を繰入れるなどして値上げを回避すべきだと考えます。
 第四に、払える保険料にし、公平な保険料のあり方をめざすうえで、保険料計算のしくみや考え方についても改善が必要です。僅かばかりの貯金があるが、月々の収入だけで言えば生活保護基準より低い世帯はたくさんおられます。しかし、税金でも課税最低限とか非課税という考え方や制度があるのに、こういう世帯でも、免除や全額減額はありません。7割減額を拡充する、また応益割の割合を、以前のように減らしていくなど、改善の余地はたくさんあります。多子世帯、それも中高大学あたりの子どもさんが何人かおられる場合、高い養育費や学費負担に加え、子どもだから収入は無いのに、国保料の均等割は世帯員それぞれにかかってきます。年頃の子どもさんを抱える世帯への配慮が必要だと考えます。
 第五に、今日、医師不足やベッドの削減、混合診療、保険外負担の増加、一部負担金の値上げ、そして政府管掌健康保険の解体、高齢者への差別医療、等々、医療改悪が相次ぎ、その影響が深刻になっています。供給体制の拡充と保険証の交付、そしてその保険証一枚でいつでもどこでも費用の心配なく医療にかかれるしくみのいっそうの拡充が求められています。財源で言えば、我が国の場合、EU諸国などと比べても社会保障費・医療給付費の対GDP比がまだまだ少なく、また、財界大企業が事あるごとに事業主負担を減らしたいと発言しており、実際その流れも強まっています。国保被保険者から後期高齢者保険への支援金負担も、結局は国民同士でお金を出し合えというもので、医療の財源問題を議論する場合、大企業や政府に必要な負担を求める論点を抜きにするわけにはいきません。本市ではこういう分析や視点が弱く、また口を開けば一元化と言われますが、今日、健保組合の解散が相次ぎ、また政府管掌保険も高齢者医療も都道府県毎に再編され、従って、一元化は結局、政府や大企業の負担を減らし、低いレベルにすべての医療保険を合わせようとする恐れが高く、とうてい賛成するわけにはいきません。目下の焦点は、国保への国の負担割合を元に戻し、政府に責任の発揮を求めることではありませんか。
 第六に、すべての被保険者に保険証の交付を求めます。まず医療を保障し、その上で納付相談に応じるべきです。構造的な問題点を放置し、根本的対策を怠ったまま、制裁措置を強めて加入者にのみ責任を転嫁するやり方を続けても、国保問題の解決には全く繋がりません。すでに何らかの形で正規の保険証を持たない世帯は全体の10%弱にも及んでいます。市長自らが、市民を制度から排除し、皆保険を崩壊させるようなやり方は直ちに中止すべきです。先頃の、我が党小池晃参議院議員の質問主意書に対する内閣総理大臣の答弁書では「医療を受ける必要が生じ、且つ医療費の一時払いが困難であると申し出た場合は、...短期被保険者証を交付することができる」と答えておられます。せめて、総理大臣の答弁に沿って本市でも改善されるよう強く求めるものであります。
 次に、議第67号のうち、介護保険第二号被保険者の保険料賦課額の限度額引き上げについても我が党は反対しております。元々高齢者福祉は国が8割負担であったものを、1980年代後半の国庫補助金削減の流れの中で5割に減らされ、そして介護保険発足時に更にその半分にまで減らされ、そのしわ寄せが被保険者・国民、地方自治体に押しつけられてきました。そしてこの介護保険料の負担が、第二号被保険者の場合、国保料値上げの要因となっていることは周知の通りであります。限度額の引き上げは、ごく狭い範囲の中に限っては累進的な改善のようにも見えますが、本格的な累進化の実現のためには、もっと抜本的な保険料のあり方の検討が必要であろうかと思います。今回のような改定だけでは、却って限度額に近い階層での値上げを招く弊害の方が大きいのではないでしょうか。
 最後に、議第4号「介護保険事業特別会計予算案」についてでありますが、第1号被保険者の保険料値下げは勿論歓迎すべきことであります。これは元々06年から08年の第三期に、制度改悪により給付が大幅に削られ給付費が当初見込額を下回った積立金の取り崩しによるもので、私も、当時から、給付費の剰余は被保険者に還元すべきと求めていたものであります。さて、政府において介護報酬の3%前後の引き上げが予定されており、これはこれで改善ですが、しかしこの改定率では、従前の引き下げ分の回復にもならないと現場からの声が寄せられています。政府に一層の引上げを求めるとともに、人材確保のための、本市の独自措置についても強く要求するものであります。この点の認識が本市では大変弱いように思います。
 また、来年度からの大問題のひとつは、要介護認定の判定基準が大幅に変更され、総じて要介護度が従来の度合いより低く判定される恐れが強くなっていることであります。そうなれば、保険給付で受けられるサービスの範囲が狭められるとともに、事業者にとっても大幅な減収となり、財政的基盤がますます危うくなる、せっかくの介護報酬改定が帳消しになってしまうのではないかと危惧されています。然るに本市では、この点についても問題意識がなく、馬耳東風といった受け止めでしかありません。国保についてもそうですが、市民のいのちと福祉・介護を守る立場から、もっと政府の動向に対し、批判的な立場からの分析が必要ではないでしょうか。法律の縛りは理解しますが、いずれも保険者は市であり、また自治事務なのですから、もっと自主的な立場が求められると思います。こういう姿勢の弱いことが賛成できない理由であります。
 以上、討論とします。ご静聴ありがとうございました。