自民党・公明党等から提案の「農業政策の立て直しを求める意見書(案)」への反対討論
No.25
自民党・公明党等から提案の「農業政策の立て直しを求める意見書(案)」への反対討論 2012年 3月 27日
日本共産党は、自民党・公明党等から提案されております「戸別所得補償制度の見直し等、農業政策の立て直しを求める意見書(案)」に反対の立場を表明しておりますので、私は議員団を代表してその理由を述べ、討論を行います。
第一に、意見書案は、表題の通り戸別所得補償制度を見直すとのことですが、所得補償は、国土と環境の保全など農業の果たす多面的な役割への評価、条件の不利な土地での営農の保障、有機農業の育成などにとって必要な制度であります。もっともこの制度は、生産量や販売量とは無関係に一定の基準で農家の所得を補償する仕組みであるため、だからこそ、まず価格保障制度を基本としたうえで、この所得補償も適切に組み合わせるべきなのであります。価格保障は生産コストと販売価格の差額をカバーするもので、これは生産・販売量の増加が収入増に結びつき、生産意欲を高める動機付けとなって、安定した再生産を裏付けるものであります。
自然の制約を大きく受ける農業分野においては農産物価格を公的・政策的に支えることが必要であり、イギリスでもこのような価格保障制度で自給率を回復向上させましたし、アメリカでも一旦廃止していたこのような仕組みを十年前には復活させています。
民主党政府の所得補償制度が批判されるべきなのは、今も言いました、基本である価格保障を全く無視していることであり、また輸入自由化と一体のものとして位置付けられていることであります。意見書案では、農業再生の要である価格保障について全く言及されていないことが、まず第一の反対理由であります。
第二に、農業政策の立て直しや自給率の向上を言うのなら、特に今日の情勢の元では、TPPに参加すべきでないとの意思表示が絶対に不可欠であります。農林水産省でさえ、参加すれば、食料自給率は13%に低下するとの試算を発表しています。正に立て直し以前の問題であり、いくらあれこれの国内対策を弄しても、一方で輸入自由化を進めていては、農業再生はありえないことは明白であります。輸出のためでなく、国民のための食料生産を最優先し、実効ある輸入規制や価格保障などの食料農業政策を自主的に決定するべきであります。
第三に、意見書案には、農地集積を進めるとか農地の規模拡大、強い農業などの趣旨のことが書かれています。しかしこれらは、昨秋策定された民主党政権の「我が国の食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画」で謳われている通りのことであって、しかも、農地集積は民主党政権の来年度農業予算の中でも目玉とされているもののひとつであります。政府の方針では、「平地で20〜30ha、中山間地で10〜20haの規模の経営体をめざす」とのことですが、周知の通り、日本の農業を実際に担っているのは家族経営であって、一農家当たりの耕地面積が約1.8haという事実からみれば、これはいかにも無謀な方針であります。仮にこの通り大規模化されたとしても、未だアメリカはこの6倍、オーストラリアは100倍の経営面積を持っていますから、いくら競争力云々、強い農業と言ってみたところで、自由化に太刀打ち出来るわけがありません。これでは、民主・自民、相競って農家つぶしをすすめていることになるのではありませんか。
最後に、第四の理由は、大きく言って、日本農業が今日のような現状に至った経過と原因についての分析が無いことであります。自給率の向上を求めておられることについては全く大賛成でありますが、それなら、なぜ日本の食料自給率は低下の一途を辿ってきたのでありましょうか。戦後、アメリカとの間でMSA余剰農産物協定が結ばれ、小麦などが大量に輸入され、その後、1961年の農業基本法以来、日本の農業は農産物輸入自由化の拡大と減反や宅地並課税など、自給率低下が、いわば政策的目的意識的に進められてきたのであります。自給率向上を目指すためにこそ、私はこのような歴史の総括と反省が必要だと思いますが如何でしょうか。
以上、賛成できない理由を挙げ、反対討論とします。