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我有り故に我思う

自民党総裁選

No.234

 現職首相が次を目指さないということ自体が、首相個人の失政というに留まらず、政権党全体が国民から見放されているということであって、マスコミはそのあたりのことはどうなのか。個性の如何は勿論あるにしても、首相の政策は政権党の政策であることは言うまでもない。看板だけ代えて何年同じことの繰り返しなのか。確かに今の制度のもとでは、多数党の党首が首相に選ばれるという意味では、一政党の党首選びに留まらない、国民全体にとっての影響が及ぶのはその通りであろう。同じ政党なら、俺が俺がということではなくみんなで話し合って、勿論選挙も経て代表を決める方法もあるし、そういうことは各党の独自問題であるから好きに選んだらいい。しかし一方、自民党の党首であっても、イコール首相ではないという選択肢もあることを、マスコミはもっと提起すべきだ。

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南極の氷と与党PT

No.233

 防衛副大臣が、自身の選挙区で、観測船が持ち帰った南極の氷をご披露したということで、公選法違反の疑いありやなしや、いやもう溶けて水に流れた、等々との議論があったが、私は、選挙民への利益供与とか言う前に、なぜ国民全体の財産であるべき貴重な学術資料であるはずのモノが、この場合、明らかに公的ではない政治活動の場で、一部の(選挙区の)国民だけに紹介されるのか、ということをむしろ問題にしたい。党派に属する政治家であっても、選ばれている限り、その活動は国民全体の為のものでなければならず、まして副大臣であれば、当たり前である。例えば訪問による要望聞き取り活動など、政党人としての党活動と、そこでお聞きした声を(反対党支持者であっても)議会で取り上げる等、区別のつかないというか一体的なことであるから、一部の論者が言うように、明確に分けられない面がある。そういうことは私も分かるし、副大臣が、選挙区で自身の活動をされることも勿論自由である。しかし南極の氷といえば、学術的な価値は高いものであろう。仮にその程度の如何は軽重あったとしても、国民全体の財産である。そもそもの持ち帰った目的や使途はどういうものであったか。なぜ副大臣が「自分のものとして」持っているのか、少なくとも今回は公的な使い方では断じてあり得ない。はっきり言って、私物化であり、公の財産を立場を利用して拝借しているということではないのか。これは横流しであり横領である。例の桜を見る会と同じ構図だ。この点に触れるマスコミが多くなく、まして最近の報道はといえば、女子アナの衣服がどうだスタイルがどうだ、どこで採るに足らない話題があった、誰がホームランを打った等々のことが混在し、「ウソを言っている訳ではないが何が真実なのかが分からない」報道が多すぎて、すでに一連のニュース同様、過去に流れ去ってしまっているのは、まことに残念至極である。
 さて、北陸新幹線をめぐっては、「与党PT」とやらが大活躍であるが、このチームは一体、制度的にどういう権限を持っている団体なのか。一般的に各党派は、議会での追及や社会的運動の組織化等を通じて自らの政策実現をめざす。与党であれば、同政党の中での議論として、大臣等に選ばれている同志を通じてその実現をめざすルートもあるだろう。自民党の中の議論で「岸田さん、もっとこうしよう」と提案したり発言したりということは、それはその党の自由な議論である。一方、国土交通省はといえば、これは行政でありその仕事は国民全体の為のものでなければならないことは言うまでもない。ゼネコンの為であったり、一部の政治家の為であったりというようなことは、言い出したらいろいろと言えるだろうが、建前としては国民の為の奉仕者でなければならない。ところが、この省とPTとの関係はといえば、これがよく分からない。議院内閣制だからというのも全く理由にはならないし、これは別の問題である。省の情報は国民全体のものであり、全体に開示されなければならない。党派・会派による差別はあってはならないことだし、質問時間とか議会運営上の扱いの違いをどうするかといったようなことは議会の内部規律の問題で、省の云々するところではない。一方、PTはといえば、党である限り、その政策実現は、外から政府に要求するか、若しくは前述の通り党内議論を通じてめざすべきものであろう。PTの議論は議論であり、省に求めることは自由だが、これを採用するかしないかは省の独自判断であって別のものである。PTの思いは、党内での議論を通じて大臣等に求めてその実現をめざせばいい。かつてアメリカではスポイルズシステムと呼ばれた、国の官僚・職員を大統領支持者で固めてしまうことの是非が、政策の貫徹かそれとも野党支持者も含めた国民全体の奉仕者たるべきか、等の議論があり、この教訓が歪められ、日本で公務員の政治活動を、一般職員も含めて禁止するとの根拠とされたという経過があるようだが、一体、今の国土交通省では、与党に奉仕することが自分たちの仕事だと勘違いしているような印象を受ける。個々の政治家が、渾然一体の活動というのは分かる。しかしまた「全体の奉仕者」であるのも然り、まして各省の仕事については「一体」はあり得ない。

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