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本会議代表質問

2000年9月定例市会」代表質問

No.1

 南区選出の井上けんじです。日本共産党議員団を代表して質問いたします。

 第一に不況対策についてであります。最近の新聞報道等によると、倒産や経済問題を理由とする自殺が増えていると伝えられ、特に倒産については、京都では、みやこ・南京都両信用金庫の破綻の影響が九月以降に表面化することも予想され予断を許さないと言われています。そこでまず、二信金の破綻と譲渡の問題について質問します。

 ある業界団体のアンケートでも、二信金と取引のある事業所のうち、融資を断られた、手形割引で規制を受けた、まじめに返済中なのにこれまでの借入金の一括返済を求められた、などの事例が報告されています。「施主がみやこの融資決定を受けられたのに実行保留の形になって工事着工のメドがたっていない」「担保の追加を求められた」「信金の担当者からは『お宅が引き継がれるかどうか、自分たちの雇用も含めてさっぱりわからない』と言われている」など様々な声が寄せられています。中信によると「優良債権しか引き継がない」とのことであり、そのランク分け・選別作業が進められています。そしてそのふるい分けが、いよいよ今月中にも通告されると言われ、一部ですが、先週あたりからその連絡が届き始めています。ある新聞報道では、みやこの貸出金7千5百億円のうち引き継がれるのはそのうちの57%にとどまる見通しとも書かれています。引き継がれないのは一体どれだけの数になるでしょうか。不良債権と認定されて整理回収機構へ移されれば、新規融資の道が絶たれるだけでなく一方的な回収が待ち受けていますから、不安が広がるのは当然です。事実上の倒産宣告に他なりません。だから新聞報道でも「9月の倒産はハイペースの兆し」と言っています。京都の経済が今重大な岐路に立たされているのです。

 ところが一方で、中信の幹部は、府・市がその気になって保証してくれれば、引継は可能だとの趣旨の発言をされておられます。つい先日も業者団体との話し合いの中で「府・市の姿勢の問題でかなり解決すると思う」と言っておられます。せめて被害を少しでも軽くする道があるのです。北海道拓殖銀行の例では、一億円以下は全部引き継がれています。今回の破綻もこれに匹敵するものです。

 去る1月14日に破綻と譲渡が発表された4日後の18日、我が党議員団は緊急の対策について市長に申し入れました。その内容は、相談窓口の設置、雇用対策、不良債権として処理せず譲渡後も取引が継続できること、当面の資金繰り、緊急融資・長期低利の特別融資、他行・他金庫へのあっせん、などでありました。また5月議会でも我党東山議員が対策を求める質問をしましたが、この時の局長答弁は「不安が起こらないよう万全を期す、キメ細かな相談を実施、連絡会議で三信金や国に要請していく」とのことでした。しかしその後京都市に助けてもらったという話は聞きません。実際、市長は、働きかけや指導はされたのでしょうか、特別の対策は打たれたのでしょうか、万全を期されたのでしょうか。更にこの9月8日、我が党議員団として市長宛て、重ねて申し入れを行いましたが、「相談窓口を開いた。国と預金保険機構に対応策を求めている。いろいろ考えてはいるけれども云々」と言われるだけで、この間、実際には何も動かれていないということが明らかになりました。中信幹部の言われるように市で保証しますか、独自のしくみを打たれますか、引継がれるためにどう援助しますか。約千八百人と言われる二信金の労働者の雇用はどう守りますか。相談を待っているなどと言っている場合ではないのです。

 そこで市長にお聞きします。分類の如何にかかわらず営業が継続できるよう、市として保証し、犠牲者を出さないよう今度こそ文字通り万全の策を講じること、また、二信金労働者の雇用を確保すること。以上二点について、一体どうされますか、お答え下さい。

<市長答弁>金融監督庁、大蔵省等に融資継続・雇用確保の指導を要請し、3信金には資金供給を、預金保険機構には最大限の支援を要請してきた。中小零細企業からの相談に対しきめ細かく対応していく。あらゆる制度を活用し万全を期す。

 不況対策の二つ目に、公共事業の市内中小企業への発注率を高める課題について質問します。この間、本市の中小企業への発注率は10数年前の83%から、今日では64%にまで落ち込んでいます。私の調査によると、例えば御池地下駐車場では工事の部署毎の発注は、他都市の企業の割合が7割を超えています。市内高速道路は阪神公団発注とはいえ新十条通り工事では下請けも含めて8割以上が、本市の入札参加資格者名簿に載っていないかまたは市外企業が占めています。一方、ある老人ホームの現場では孫請けまで含め3分の2が市内の企業でしたし、さらに別の老人ホーム・児童館や市営住宅建設では元請けはすべて市内企業などとなっています。地元中小企業への発注率を高めるという立場から言うと、大型事業よりも、住宅福祉教育などの分野の方が明らかに効果が大きいということは議論の余地はありません。また、公共工事着工統計年度報によると、工事金額当たりの労働者数は、金額規模が小さいほど多くなっています。雇用効果がそれだけ大きい訳であります。

 「官公需についての中小企業の受注の確保に関する法律」では、中小企業への仕事の確保そのものが目的とされていますし、東京板橋区の住宅リフォーム資金助成制度は、「区内施行業者の振興をはかるため」との目的が掲げられ、地元業者に頼んだ場合、助成されますし、明石市でも市内の業者の利用を条件に自宅補修費の10%、限度額10万円の助成をする「緊急対策事業」を発足させたところ、予定以上の応募がありましたが、「財政は厳しいが業界への波及効果は大きい」と、枠を拡げて対応されました。また和歌山市では、市の工事を県外の業者が受けた場合、その下請けは「市内の業者から選ぶものとする」との市の要項が作られています。

 本市でも「配慮してください」との遠慮がちな表現ながら「できる限り地元の下請け業者に発注を」という理財局長名の文書が2年前に出されており、また今年の3月議会では「地元中小零細企業への優先的発注を」との請願が全会一致で採択されています。例えば学区単位に気軽に老人が通える施設や児童館を計画的に建設する、介護保険の住宅改修をもっと利用しやすいものにしたり耐震改修への援助を強めたりして需要を誘導する、本市の各施設・建物・保育所・学校などの小規模修繕等々、考えられることはいくらでもあります。

 そこで質問ですが、住宅福祉教育や身近な文化スポーツ、防災など、本市が積極的に中小向けの仕事をおこすべきですがいかがでしょうか。小規模修繕については、指名業者でなくても仕事が回るようにしてはどうでしょうか。東京の新宿区では「入札参加資格の審査申し込みができない方を対象に、小規模工事の受注を希望する業者を受付ける」との募集が行われています。採択された請願を、市長はどう活かされますか。お答え下さい。またこの際、市内中小企業への発注率を高めるために、まずその目標と期限を、具体的な数字で設定されますように求めます。合わせてお答え下さい。

<高木副市長答弁>地元中小企業への発注を基本とし、分離・分割発注、共同企業体方式など優先発注に努めている。中小企業むけ契約実績は国の目標を大幅に上回っているが、引き続き努めていく。

 不況対策の最後に、訪問調査と相談体制についてお尋ねします。この春、南区の地区労働組合協議会では、一千近くの事業所・商店への訪問聞き取り調査に取り組まれました。不況を何とかしてほしい、京都の経済が心配だ、大型店は困るなど切実な声が寄せられています。京都市でも単なる相談待ちでなく、事業所訪問調査に取り組むべきであります。また相談窓口を各区役所などで開いていくことになっていますが、おおむね各行政区一回きりの巡回制でなく専門家の常駐体制とすべきであります。答弁を求めます。

<産業観光局長答弁>訪問調査は、職員が実態把握し、産地診断事業、西陣機業調査等に努めている。相談体制は中小企業指導所でH10年7月から相談窓口を設置。昨年、区役所・支所を巡回する相談窓口を設置し専門家による相談に応じている。

 次にマンション対策についてお尋ねいたします。

 家はそれ無しには生活ができないもっとも基礎的基本的な生活手段でありながら、政府の「持ち家」政策のもとで、公営住宅建設が軽視されるなど、「個人の甲斐性」の問題にされ続けてきました。と同時に、マンションは市民のマイホーム要求に応えるとともに、適正にその建築や運営がはかられるなら良好なまちづくりにも役立ち、また実際、多くの管理組合では健全な住民コミュニティ形成への努力が続けられているなど、今や、都市における主要な住居形態のひとつにもなっています。行政の立場から言っても、特に大きな買い物であるだけに充分な消費者保護がはかられなければなりませんし、またまちづくりの観点や住宅政策からの位置づけも必要です。業者への指導・監督、共用部分の修繕への住宅融資の適用、給排水設備の維持管理への企業負担の指導、固定資産税の減免対象の拡大、耐震診断と防災改修への助成など、独自の課題が少なくありません。計画的に修繕・改良し、良好な住宅ストックとして維持することは、よりよいまちづくりや資源の浪費を防ぐ点からも重要な意義があり、管理の基本的な責任は所有者と管理組合にあることは当然ですが、国や自治体にとっては、その住民の共同管理を支援することが求められています。とりわけ初期にできたマンションが老朽化の時期にさしかかってきていることや、高齢化がすすんできていることなどから、大規模修繕をどうしていくか、融資の受け方、資産管理のあり方等々、今日的な問題も生まれています。こうした現状のもとで、いよいよ建設省も、政令市の相談窓口の設置運営への経費補助、耐震診断や改修の補助など、マンション総合対策に乗り出し始めています。すでに大阪や横浜・川崎などで相談窓口が開設され、大阪では耐震診断・改修への助成が実施されています。

 そこで、質問します。ひとつは専門知識をもつ職員を配置し、専門家・専門家団体との連携・支援体制などを備えた相談窓口を設置すること、ふたつには管理組合の活動状況など本格的な実態調査をすること、三つ目に耐震診断や耐震補強・改修への援助、及び長期修繕計画作成など管理組合のとりくみを支援すること。以上三点についてお答え下さい。

<都市計画局長答弁>マンション対策における行政の役割等について今年度、調査研究している。現在、住宅審議会のテーマの1つとし、答申を得て、市住宅マスタープランの見直しを行い、適正なマンション維持管理の方策を検討したい。

 次に精神障害者施策・精神医療について質問します。私の住む南区で、4年前、50歳前の女性が心臓発作で脳の一部に酸素が送られなくなり、若年痴呆といわれる症状になられ、いま精神障害者手帳をもらっておられるという方がおられます。介護体制や、特に施設や医療機関への送迎の体制や費用が大変だとのことでありますが、同じ手帳でも、せめて身体障害者手帳なみに制度を充実させてもらいたいとのご家族のお話しであります。

 今日、広い意味での精神疾患は誰でもがかかりうる病気・障害であり、その人数も増えており、またその種類や態様もいろいろです。早期発見早期治療や生活支援、社会復帰の体制の確立など総合的な対策が求められています。しかもその担い手は、法律の改正によって京都市の仕事となりました。これまでの遅れを取り戻し、施策を前進させることが切実な課題となっています。以下、市長の見解を求めます。

 第一に、「心のふれあいプラン」についてですが、地域生活支援センターやグループホ−ムなど、その目標達成のメドはいかがでしょうか。特にヘルパー派遣については目標すらあがっていません。さらに共同作業所についても全然位置付けがなく評価も将来の発展方向も何も触れられていません。本来公的な責任を果たすべき行政の立ち後れの中で、やむなく家族や関係者の皆さんが必死の思いで作ってこられたものですから、民間がやっているから補助するんだという考え方は全くの主客転倒です。ヘルパーの目標と見通し、共同作業所の位置づけや将来方向について答弁を求めます。

 第二に体制についてですが、保健所と心の健康増進センター、医療機関、福祉事務所、支援センター、授産施設や作業所、職安・職親など各施設・機関が連携を強めていくうえで、当面、保健所と心の健康増進センターの体制強化、特に保健所における精神保健福祉相談員の複数化が必要です。センターも、相談への対応に追われておられます。施策を支える体制や人員について、その充実や増員の方向についてお答え下さい。

 第三に、医療についてです。救急・緊急のシステムを早急に確立することが求められています。府との協議はいかがでしょうか。具体的な検討内容を明らかにされるように求めます。また、法改正により、医療保護入院における移送制度も京都市の役割になりました。体制整備を急ぐべきです。合わせてお答え下さい。

<田中保健政策監答弁>障害者ケアマネジメント体制整備検討委員会を設け、精神障害者のホームヘルプの支援体制を検討する。共同作業所については、設置数の増加など充実に努めているところである。精神保健福祉相談員の養成を行い、保健所と心の健康増進センターとの連携強化に努める。精神救急医療システムは、府と連携し整備に取り組む。緊急移送制度の創設をうけ、京都精神病院協会や関係団体と協議しており、早期の実施にむけて取り組む。

 最後にいわゆるホームレスの人たちについて質問します。最低限の衣食住を保障し、市民が文字通り生きていける環境を確保することは基本的人権の根幹にかかわる問題であると思いますが、常々人権を強調されておられる市長として、いかがお考えでしょうか。

 訪問活動の中で私が出会う人のほとんどは「仕事を紹介してほしい」と言われます。ある日突然解雇でローンが滞り、背広姿のままホームレスになられた方もおられます。深刻な不況、リストラ、失業や廃業など仕事にかかわる原因が第一義的なものであるとともに、この人たちに対する生活保護行政のあり方もまた、背景のひとつとして挙げられなければなりません。やっと実態調査も行われ、この結果を生かすことが求められています。この一年でホームレスになった人7割、市出身者4割、収入3万円以下8割、体調不良5割、仕事を求めている人9割以上、などの数字が明らかになりました。倒産防止やリストラ規制など不況対策・労働行政からの対策とともに、当面本市としても次のような手立てが必要です。

 そこで質問します。まず保護所の増設、当面、簡易旅館の借り上げなども含めてまず寝泊まりする場所を確保することです。特に緊急の問題として、最低、年末年始の食事と宿泊を希望者全員に提供するように求めます。多くの大都市では提供しています。

 次に仕事についてですが、京都の有効求人倍率は45歳以上は百分の12、55歳以上では僅か百分の7で、仕事が見つからないのを本人の責任にすることはとうていできません。だれよりも働きたいと願っているのは本人自身なのですから、国や府にも声を挙げるとともに、本市としても、独自に仕事の確保やあっせんなどを行うべきであります。

 第三に生活保護についてです。厚生省は、働く能力や住居の有無を理由に排除しないこと、福祉事務所での多様な相談体制を整備することなどの方針を明らかにしています。この方針通り、本市でも具体化すべきです。住まいがなくても受けられるようにすべきです。家がないから保護しないというのではなくて、保護して住まいを提供するのが市長の役割ではないのでしょうか。本来これらの人たちは生保対象のはずだと思いますがいかがでしょうか。お答え下さい。さらに、ホームレス対策は事実上、下京福祉事務所だけになっています。体制も充実させつつ、それぞれ現在地で申請や相談に対応できるようにすべきだと思いますが合わせてお答え下さい。

<保健福祉局長答弁>実態調査の結果、仕事に従事していた方が不況の影響で失業しホームレスになり、多くが福祉施策より仕事のあっせんを要望していることが明らかになった。あっせんは国の責任であり、市として要望していく。生活保護の適用は、市内各福祉事務所で相談し状況に応じて中央保護所への入所や入院により、適用を行っている。

 二信金の問題に絞って第二質問いたします。

 五月に産業観光局長が「万全を期す」と言われたのにその後何ら手を打たれていないという今日の経過をふまえて質問している訳ですから、同じ答弁では、きわめて不十分です。これでは、「不安がおこらないように」という市長の言葉も、その決意の程度に不安を感じない訳にはいきません。「普通の商売をしていたのに地獄の底まで道連れにされるのは納得がいきません」。これが市民の声であります。今、京都の経済が重大な岐路に立たされています。京都市が保証するのかどうか、が問われているのです。中信の幹部は「保証を取り付ければ引き受ける」と言っておられます。まさに、市長の決意にかかっています。今度こそ、文字通り万全を期されるように、重ねて求めまして、質問を終わります。