「2005年11月定例市会」代表質問
No.2
南区選出の井上けんじでございます。私は、日本共産党市会議員団を代表して、市長をはじめ理事者の皆さんに質問します。
小泉内閣のすすめる「三位一体改革」と地方分権について
まず第一に財政と地方分権についてです。この議会は前年度決算が最大の議題ですし、また来年度予算編成の大詰めの時期に開かれています。前年度・今年度と、市長は各種団体補助金や学校・保育所運営費等の削減、保育バスや市営葬儀の廃止、敬老乗車証の有料化、各施設使用料や高校授業料・保育料などの値上げ等々を進めてこられました。そして来年度予算については、既に360億円の財源不足の見込みだと発表されています。特に地方交付税が23億円減額との見通しですが、ではそれに見合う税源移譲は今後どうなっていくのでしょうか。市税収入増が41億円と見込まれています。これは政府の庶民大増税が市民税にも跳ね返っているからでしょうが、まさか市民への増税が税源移譲というわけではないでしょう。
そこで、小泉内閣の進めている、所謂三位一体「改革」の評価についてでありますが、市長は「税源移譲の不足が問題だが、三位一体は推進」との立場であります。しかし元々、補助負担金や交付税の減額分がそっくりそのまま委譲されるわけではないと当初から言われてきましたし、また京都のように中小企業比率や高齢化率の高いまちでは、そもそも税原移譲だけでは不十分で、交付税による財政調整及び財政保障機能も欠かせないと考えます。三位一体「改革」の本質は、自治体の願いである税源移譲を逆手にとって、全体として国から自治体へのお金を削減しようとするもので、毒入り饅頭だと思います。また補助金・負担金も、福祉や教育等の分野とムダ遣いを誘導する補助金との区別が必要です。この点で義務教育費の国庫負担堅持は当然ですし、また生活保護の国負担割合を減らす動きは断じて容認できません。逆にムダな例では高速道路の事業区分の見直しがその典型です。国の手当で市の負担が減ると市長は言われますが、これは政府の高速道路推進の誘導策に乗っているだけの話ではありませんか。
また元々分権自体はもちろん肯定すべきものですが、政府のいう分権、国から地方へ、というのは、国の責任と役割を放棄して地方に押しつける、国から地方への財政支出を減らす狙いを持っているのではありませんか。分権の本来の意味が、今日では変質してしまっているのではないでしょうか。しかも、今日の地方分権論は「団体自治」についてしか議論されず、「住民自治」の観点が全く欠落しています。住民のくらしを守る、住民が主人公との観点がないから、結局、財源不足のしわ寄せが市民に押しつけられる訳であります。三位一体や分権論について、根本的・批判的な立場からの再検討が必要ではないでしょうか。そこで質問ですが、そもそも三位一体「改革」自体が、国から市への予算を減らし、市民に痛みを押し付けていると私は思いますが市長の認識は如何ですか。また特に生活保護費の国庫負担割合は絶対に堅持すべきだと思いますがどうでしょうか。更に、来年度予算編成にあたり、福祉や教育は後退させない、市民向け施策は後退させないとの基本的立場を堅持されるよう強く求めますが、これら三点についてお答え下さい。
【毛利副市長】国から地方に権限と税財源を移譲することは必要不可欠。地方がまとめた改革案を十分に尊重し、三位一体改革が地方に負担を押しつけるものでなく、地方分権の実現に資するものとなるよう、一層強力に国に求めていく。
【松井副市長】生活保護制度は国の責任で実施し、費用も本来全額国が負担すべきものであると考えている。厚生労働省の見直し案は、国の負担を一方的に地方に押しつけるものであり、国の責任放棄と地方への負担転嫁に他ならず、他の指定都市と協調し、断じて反対していく。
【市長】これまで「福祉・教育」については、断じて後退させないとの決意で、貴重な財源を重点的に配分してきた。今後とも、市民生活の安心・安全をしっかりと守り、「京都にいつまでも住み続けたい」と感じることのできる京都の実現に向けて邁進する。
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介護保険料の値上げをやめ、減免制度の拡充を
第二に、介護保険について質問します。今年の二月に、私の近所のお年寄りの方から、「昨年に比べて年金額が減っているがどうしてだろうか」というご相談がありました。一期二ヶ月分で二万円余り減っています。これは老年者控除が廃止されたため新たに所得税が掛かり天引きされたためでありました。今、政府の増税がいろいろな形で市民のくらしを直撃しています。更に問題なのは、(1)各種控除や定率減税の縮小廃止、消費税率引き上げなど、引き続く大増税が計画されていること。(2)この増税が市民税や介護保険料などの引き上げに連動していること。(3)税金以外にも各種の保険料や医療の窓口負担など軒並み値上げが続いていること。(4)国民健康保険料や保育料、地下鉄運賃など市長自身も値上げをすすめておられること、等々であります。まさに市民はあっちからもこっちからも増税と値上げの荒波にのまれ、くらしを切り詰め、節約を余儀なくされています。
そこで一つ目は保険料についてです。市長は、来年度の65歳以上の被保険者の基準額を、現行3800円から4900円へと、なんと26.7%もの大幅値上げ案を打ち出されました。今の保険料でさえ高い、なぜ天引きなのかという声を本当によくお聞きします。第二段階の改善なども提案されていますが、全体として大幅な引き上げの中での手直しにすぎません。また税制「改正」の影響で、これまで市民税非課税だったのに、新たに課税されることになり、保険料の段階があがってしまう人たちがおられます。激変緩和措置で和らげるとのことですが、しかしこれは、被保険者全体で負担し合うというだけの話です。国や市の予算で措置すべきです。また新第二段階ができても、現行の減免制度は活かし充実すべきだと思いますが、如何でしょうか。保険料を値上げしないよう、政府に対し、国の負担割合を引き上げるよう、もっと強く求めるべきです。また市長も、独自の手だてをとられるよう強く求めます。減免制度と保険料についてお答え下さい。
【折坂保健福祉局長】低所得の方や税制改正への配慮について、本市では通常6段階を9段階とする独自の保険料段階や保険料率の設定を併せて示している。低所得者に対する支援について、国に要望している。
二つ目はすでに十月から実施されている食費・居住費の値上げの問題です。デイサービスなど通所施設では、食事はコンビニのおにぎりでとか、配食サービスの方が安いのでこちらを利用したいなどの声が上がっています。ショートステイでも、利用料一日4700円前後だったのが、何と1万円前後にもなっています。入所施設でも、やっと入れたと思ったのに年金より負担額の方が高い、生活保護を受けている人はどこへ行けばいいのか、などの心配が広がっています。お金のある人は個室へ、そうでない人は大部屋へと、福祉の分野にも勝ち組負け組の格差が広がっています。各事業所も介護報酬が減り、収入減で運営が大変です。職員の非常勤化などが進んでいます。つぶれる事業所も出てくるのでは、と言われています。しかし東京都の荒川区や長野県松本市など、利用者負担を少しでも減らすよう頑張っている自治体もあります。市長も、実態を調査し、事業者への支援と利用者の負担軽減をはかるべきです。如何ですか、お答え下さい。
【保健福祉局長】介護報酬の改定や低所得の方への対策については、国において適正な措置が講じられるべきと考えており、今後とも要望していく。
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新予防給付と地域支援事業について
三つ目は新予防給付と地域支援事業についてです。政府の想定するように、現行要介護1の7割の人たちが要支援2になるとすると、要支援1と合わせて、京都では現行要介護認定者の実に36%もの人たちが新予防給付へ移行し、介護給付の対象からはずれることになってしまいます。お年寄り一人一人の生活実態に即して、少なくとも現在の介護や生活支援の水準を後退させないようにすべきでありますが、如何ですか、お答え下さい。
【保健福祉局長】新予防給付の実施にあたっては、訪問介護における家事援助は一律に給付の対象から外れることはなく、一人暮らしや要介護者同士の夫婦に対し、必要とされる家事援助については引き続き利用できるものとされている。
地域支援事業は、訪問指導や転倒予防教室など保健所で実施されている現行の老人保健事業の一部を介護予防という位置付けで再編しようというもので、公費の他、介護保険料もこの事業に充てるとされています。しかしこれは、老人保健事業の国の負担を減らし、新たに介護保険料をつぎ込むもので、保険料値上げの要因になるものです。また利用料については取るべきではないと考えます。
更に、これらの事業が地域包括支援センターへ移行していくことになれば、今後の保健所の仕事はどうなっていくのでしょうか。公衆衛生や老人保健事業の公的な役割と責任はどうなっていきますか。不安定雇用労働者などの健診の充実や乳ガン・子宮ガンの健診も二年毎でなく毎年にしてほしいという声があることなど、老人以外の分野も含め、保健所のいっそうの役割の発揮が求められています。私は、介護保険としての介護予防とともに、地域包括支援センターと保健所とが力を合わせ、中高年齢者の健康保持・増進や疾病の早期発見早期治療から、介護保険外の介護予防までの一貫した総合的な公衆衛生事業・老人保健事業を充実発展させるべきだと考えますが如何でしょうか。お答え下さい。
関連して、現行の介護保険外の生活支援サービス、すこやか生活支援事業等を後退させないこと、及び、保健所とともに、勿論福祉事務所も地域包括支援センターとの連携を強め、いっそうの公的役割を発揮されるよう、合わせて求めておきます。
それにしましても、この介護保険法の改悪は内容のひどさもさることながら、実施までの期間が短く、しかも膨大な政令や省令等がついてまわりますから、国民は勿論、自治体にとっても大変ではないでしょうか。現場の関係者の皆さんも利用者への説明など必死の毎日が続いています。あらためて、強引な法改悪をすすめた自民党公明党及び民主党に心からの憤りを覚えるものであります。
【保健福祉局長】保健所が新たに設置する地域包括センターとの十分な連携のもと、65歳以上の方の生活機能の維持向上に重点を置いた、より効果的な介護予防事業の拡充が図れるよう検討していく。
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仕事の確保と雇用の問題について
第三に、仕事の確保と雇用の問題について質問します。今、市民の皆さんのくらしや仕事の様子は如何でしょうか。税金や保険料などが増え、逆に給料や年金が減って、手取り収入はますます減るばかり、それでもまだ仕事があるだけマシだというのが多くの勤労者の実感です。政府のリストラ推進策によって不安定な雇用が激増しています。市民のフトコロが寒い上に大型店に客を奪われ、商店の売り上げも落ち込む一方ではありませんか。所得の格差が拡大しています。弱肉強食、強いもの勝ち、自分のことは自分でと、政府は意図的に格差拡大政策をすすめています。何よりも市民に働く機会を提供し、そこでの雇用の安定と生活できる賃金を保障することなど、仕事への支援が重要な課題になっているのではないでしょうか。
私は常々公共工事の現場へ行って施工体系図を見せて頂いたりしていますけれども、高速道路の工事などは事業費が莫大な割に市外の業者が多く波及効果もありません。一方市営住宅や福祉施設などの工事では身近でいろいろな業者の方が入っておられます。また最近、業種にもよるでしょうが、学校関係や土木事務所などからの仕事が少なくなったなどとの声をよくお聞きします。市営住宅にお住いの市民から手すりの改善を求める要望がありましたがこれもお金がないという返事でした。ここ数年の市長の予算削減が影響していることは明らかです。赤字覚悟で最初から採算割れ承知で札を入れなければならないと、中小企業・業者の方は言っておられます。仕事を確保しようと、みなさん、必死です。またPFI方式では中小企業等への仕事も減っていくのではないでしょうか。公共事業の対象を切り替え、身近な予算を確保して中小企業中小業者への仕事の提供に努めるべきであります。また発注にあたり、下請けには市内中小企業・業者を選び、そこでの労働条件を確保するように、受注企業に、もっと強く働きかけることを求めます。労賃が下請けへ行くほど労務単価を割っているという例も少なくありません。生活の保障は勿論、地元資材の活用、公共事業の品質確保のためにも、地元への下請けと、そこでの労働者・職人さんの賃金・労働条件の改善が必要です。本市でも、「下請けは地元中小企業となるよう努めて下さい、ご協力をお願いします」などと呼びかけていますが、例えば埼玉県では、約款で、県内の業者を選定するよう努めなければならないと謳われており、これは公正取引委員会からも、法違反ではないと了解済みであります。さらに福祉法人など、公的施設でありながら、発注主体が県でない場合でも、補助金を出す段階で、同様の要請をしているとのことであります。また函館市でも、元請に対する指導にあたり、土木部長名の文書と指導要綱の中で、「地元資材の積極的活用と雇用の安定、就労の促進」という理念が明確に位置付けられています。「下請け労働者にも公正な賃金の支払いを求める公契約条例」の制定を求める動きも広がっています。今年6月の全国市長会でも「公共工事における建設労働者の適正な労働条件の確保を求める」政府への要望が決議されています。市内中小企業・中小業者支援・下請け支援策を強め、元請への指導を強めるべきです。お答え下さい。
【小池理財局長】本市の公共事業については、平成16年度の市内中小事業者との契約件数は91%を占めている。
本市公共工事の受注者に対しては、市内の中小事業者を選定するよう協力を求めるとともに、適正な労働条件の確保についても要請している。今後とも、地域経済のより一層の活性化を図るため、市内中小事業者の健全な育生に努めていく。
更に、働く意欲のある市民に仕事を保障すべきであります。今、雇用問題の最大の特徴は、完全失業者の周りに、失業率にはカウントされない膨大な不安定就労が、年齢や階層を問わずに広がっていることであります。自営業者が休業若しくは廃業して半失業状態になっていることも大きな特徴です。リストラ傾向で、民間での雇用拡大は、残念ながら期待できる状況ではありません。だからこそ公的就労の拡大が必要です。まちの美化や緑化推進、防災等々、身近な地域の環境整備などに頑張ってもらえば、雇用拡大と市民のくらしの環境の改善との一石二鳥が図れるではありませんか。特に高齢者については、高齢者雇用安定法でも、「自治体等は就業の機会確保に努める」べし、と謳われています。緊急雇用創出事業の政府への復活要求とともに、市独自の現行雇用対策事業の継続、枠と対象のいっそうの拡大を求めますが、お答え下さい。
加えて、本市でも勤労者向けのハンドブックを発行されていますが、これの充実といっそうの普及、及び川崎市や横浜市などのように労働相談窓口を設置すること、政府のリストラ促進政治に対し、市民の仕事とくらしを守る立場から、もっと批判の声を挙げるべきことも、合わせて求めておきます。
【市長】本市独自の雇用創出特別対策事業として、総額2億円を予算化し、6つの事業の実施により延1万7千人の雇用創出を図っている。今後とも経済情勢の動向を見極め、市民の雇用の確保に努めていく。
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指定管理者制度について
最後に指定管理者制度について質問します。この制度は、地方自治法を改悪し、公共的団体に限られていた市立施設の委託先について、株式会社も可能とするよう対象を広げたものですが、その本質は、住民の福祉の増進を目的とする公の施設の管理運営を民間企業、即ち営利目的にも開放しようというもので、そもそも住民の権利を守ることと営利追求が両立するものかどうか、根本的な問題点を孕んだまま導入されたものです。
元々改悪された地方自治法でも、管理者の指定は「必要があると認めるとき」との条件が付いているにも拘わらず、何の批判的検討も抜きに、いわば国いいなりに本市でも具体化されてきました。導入するかどうかは自治体の判断であり、要は市長の姿勢ひとつだと、私は思います。政府は、例えば保育所については指定管理者制度発足前から「公共的団体だけでなく、株式会社等への委託も可能である」と、当時の、改悪前の地方自治法を踏みにじって勝手な通知を出していましたが、更に問題なのは、この通知が指定管理者制度発足後の今日でも有効とされていることであります。即ちこれは、今日でも「委託も可能である」ということに他なりません。また当初言われていた個別法の歯止めも、その後老人ホームや図書館などについて、政府はこの歯止めをはずすと言いだすなど、筋の通らない強引な手法で、なし崩し的にこの制度が悪用・拡大されようとしています。
今、一方では自治体をひとつの経営体とみなして、本来自治体の主人公である市民をその客とか利用者とみなし、税金以外にも料金を取り立てたり、公の仕事をコストと見なして費用の面だけから評価するような方向と、他方では、まさに財界がビジネスチャンスと言っている通り、自治体の業務を大企業の営利の対象にしようという方向とが、相まって強められています。指定管理者制度も、これらの動きの一環であります。導入はすべきではありません。今後の展開によっては、利用料や使用条件などの変更・改悪等も危惧されますし、すでに他都市では、指定に際し、従来の受託団体の職員の解雇や雇用条件変更などの問題も起こっています。そもそも、4〜5年先は指定からはずれるかも知れないという状態で、指定団体もその職員も落ち着いて市民のための仕事に打ち込めるのでしょうか。ある指定団体の職員も「今回は従来通りの指定だったが、次が心配だ」と言っておられます。神戸には株式会社が経営する保育園があり、神戸市も認可してきましたが、つい先日、経営難を理由に今年度末での廃業を決めてしまいました。今、保護者や職員さんたちが、今後どうしようかと困っておられます。市長は、こういう危惧や問題点を心配無用と断言できますか、従来通りの条件を守ると約束すべきです。すでに本市でも福祉法人に限るとする例や公募によらない指定などの事例もありますから、こういう方法も活かして、公共性を守るという立場を後退させないように強く求めるものですが如何でしょうか。お答え下さい。行政に関する法律学で有名な杉村敏正教授は、その著書の中で「行政は国民の権利を実現することにおいてのみその存在理由を持つ」と書いておられます。自治体とは地域住民が自らのくらしを守る組織だという憲法と地方自治の原点からの原則的対応が求められています。この原則を市政のあらゆる分野に貫かれるよう、あらためて強く求めるものであります。積極的な御答弁を期待致し、質問を終わります。
【松井副市長】指定管理者制度について。施設の管理基準等は条例で定めるものであり、指定管理者は、その範囲内で業務を行い、最終的な責任は本市にある。指定管理者の選定に当たっては、市民サービスの向上や行政責任の確保など多面的に検討を行っている。更に、制度導入後も「指定管理者制度運用指針」に基づき、指定管理者から定期的に報告を求めるなど、点検、指導等を行い運営に万全を期することとしている。公共性、利便性は十二分に確保できるものと考えている。