「2006年11月定例市会」代表質問
No.4
社会保障の連続改悪に対する市の対策を
南区選出の井上けんじでございます。日本共産党市会議員団を代表して市長に質問します。最初に、市民のくらしと福祉・医療を守る課題について質問します。
10月から、ゴミが有料化、また高齢者は医療機関の窓口負担が2割だった人が3割になり、療養病床入院の費用も大幅値上げ、更に障害児の施設やサービスもこれまた値上げです。今年だけでも地下鉄運賃や学童保育利用料、障害者分野での応益負担、所得税に府市民税、国民健康保険料から介護保険料など相次ぐ値上げではありませんか。
ある市民の方は「去年国保料が2.5倍になり、今年また1万円上がりました。介護保険料は1.2倍、所得税1.5倍、府市民税は一昨年0だったのに今年は4万7千円、一方年金は3%減った」と言っておられます。額に違いはあっても、多くの市民に共通の実態です。「区役所から封筒が来るたびにゾッとしています。この先どうして暮らそうか不安です。年寄りは早く死ねというのでしょうか」。市長はこれらの声をどう聞きますか。
第一に、政府の増税がそれ自身負担増となり、第二にその増税で自動的に市民税や保険料が上り、そして第三に市長自身の権限による値上げが輪をかけて、特に国保や介護保険など保険料が二重三重の値上げになっています。今、介護や医療の分野では、保険料や利用料・一部負担金などの値上げに加え、保険証の取上げ、リハビリ日数など保険給付の制限、保険給付からの排除、保険部分の縮小、保険外部分の拡大など、いつでもどこでも必要な給付を受けるという皆保険のしくみ、社会保障の大原則が崩されようとしています。
そこで、以下具体的な課題毎に質問します。
○介護保険の車イス、ベッドの取り上げをやめよ
まず介護保険に関してですが、介護度の軽い高齢者からベッドや車イス、ヘルパーさんの時間やデイサービスの回数などが取り上げられたり減らされたり、利用が大幅に制限されました。私に寄せられた手紙を紹介します。「私にベッドを返して下さい。私は82歳の生活保護受給者で、要介護1です。手足の筋力が低下し、介護保険からベッドを借りて暮らしてきました。電動ベッドのお陰で立ち上がれていました。10月24日にベッド屋さんが来て引き上げていきました。大変ショックです。畳の寝床からは立ち上がることはできません。人生もあと僅かな年になってこんなことになるとは夢にも思っていませんでした」。今この方は、新たに自費で5千円も払ってベッドを借りておられます。また別の人は、ベッドが取り上げられて畳の上の布団に替わってから悪戦苦闘しながら10分もかけてやっと起きあがっておられます。ベッドが使えなくなってヘルニアになってしまった。介護予防どころか逆に重度化してしまったなどという話さえあります。今年4月から保険料が大幅値上げ、そして実際の介護度も変わらないのに今度はサービスの制限です。やらずぶったくりとはこのことではありませんか。とりわけ低所得者対策は緊急に必要です。国に声を挙げるとともに、レンタル費用の一部を助成している他都市の例などにも学び、ベッドや車イスを市独自で貸し出すべきです。お答え下さい。
(保健福祉局長) 自立支援の観点から起きあがり・寝返りができる方は対象外となったが、真に必要な方には引き続き利用いただける。適切なサービス利用で状態の改善や悪化防止に努めて頂く。大都市とともに国に対象者の検討・検証を要望している。
○地域包括支援センターの体制充実を
また、地域包括支援センターも、要介護認定やプランの作成、事業者や関係機関との連携、内容が複雑化している相談業務など仕事が多すぎます。特定高齢者が予定通り紹介されず、介護予防が十分機能していませんが、紹介されてきたとしても現状ではとても手が回りません。相談など収入の対象にならない業務が多く、体制の充実が必要ですが、今の委託費ではとても足りません。地域によっては配置にアンバランスがあったり、センター自体が不足したりしているのではないでしょうか。老人の実態把握のためにも、まず市長がもっとセンターの実態を把握すべきです。関係者のネットワークづくりも役割のひとつと言われていますが、これこそ公的な責任と役割を果たさなければならない福祉事務所や保健所の仕事ではないでしょうか。認定調査などケースと課題によっては市も直接分担すべきです。委託費の増額など体制の充実と認定調査の市自身の実施を求めます。お答え下さい。
(保健福祉局長) 体制・運営費は十分な活動に必要な額を見込んだもの。現場の実態を把握し、運営協議会で円滑な運営確保について協議する。認定調査は居宅に更に委託する。
○療養病床削減の対策を
加えて、この前の国会で自民党・公明党が療養病床削減を決めました。6年以内に、全国では医療型25万床を15万床に減らし、介護型13万床を全部廃止するとのことであります。京都では、合計約5千床が千床に減らされることになりますが、特に問題なのは、すでにこの7月から診療報酬が大幅に減らされ、退院を余儀なくされるなど事実上廃止への先取りが始まっていることであります。市内では8月に2000床以上あった医療型ベッドがすでに1700床余りに減っています。追い出される老人はどうすればいいのでしょうか。大至急実態をつかみ、必要な療養病床は守るべきです。いかがですか。
(保健福祉局長) 社会的入院の解消、医療費適正化、社会保障の堅持を目指すもの。府が実態調査をしている。
○市立病院、京北病院の医師確保に全力を
また、医療の分野で今大きな問題になっているのが医師不足であります。医学部定員の削減や診療報酬の引き下げなど政府の責任が大きいとはいえ、市立病院と京北病院の長時間勤務や、宿直という名の夜間勤務など、医師の過酷な労働条件と深刻な医師不足の解消は市独自の課題です。特に京北では病院の存亡にかかわる問題です。九月議会でも医師確保に全力を尽くすと答弁されておられますが、配置について、いつまでにどうされますか。具体的に、お答え下さい。
(保健福祉局長) 9月に「京北病院のあり方検討委員会」を立ち上げた。医師等の公募、大学・医療団体への働きかけ等、全力で取り組む。
○利用料負担増の中止を
更に、政府の増税即ち各種控除の縮小・廃止などにより自動的に名目上の所得が上がったり非課税から課税になったりして、収入は変わらない、むしろ減っているのに、利用料が値上げになったり、給付がストップされたりという例が生まれています。人によっては敬老乗車証の利用料が自動的に3千円から5千円に、或いは5千円から1万円になったりしています。緊急通報システムも同様です。オムツその他の家族介護用品の給付の対象は非課税世帯ですから、課税になってしまうと、対象外になってしまうのです。市長の判断ひとつで改善が可能ですから、従来通りとすることを求めます。お答え下さい。
(保健福祉局長) 階層変更が生じているが、電話相談窓口設置や個別対応で十分説明、理解を得ている。税制改正の趣旨、本市の財政状況から、長期的維持のためやむを得ない。
○障害者自立支援法見直しを求めよ
さて障害者の皆さんの分野ではいかがでしょうか。私宛てに届いた葉書を紹介します。「精神障害者もNHKの受信料を無料にして下さい。障害年金で生活しています。自立支援法が通ったから生活が苦しいです。よろしくお願いします」。市長はこの声をどう聞きますか。授産施設では働いて得た工賃以上の負担で通うほど赤字です。日払い方式への変更で施設の収入も大幅に減り、行事ができなくなったり、職員の労働条件が悪くなったりするだけでなく、施設の存続すら危ぶまれる事態にも至っています。市自身の各施設へのアンケートでも「定率負担の導入で利用者の働く意欲が低下している。収入が減少し施設運営の維持ができない。最低限必要な職員配置すらままならず、事務量が増加し手をとられている。障害程度区分の判定が不明瞭だ」等、自立支援法への心配と批判的な声ばかりが目立っています。支援法の弊害は明らかではありませんか。応益負担と日払い方式の見直しは最低限の要求です。国に声をあげるべきだと考えますが、いかがでしょうか。
(保健福祉局長) 利用料は4割の主要市が独自に軽減、日払い方式は施設の収入減となり厳しい運営となっている。他都市と連携し利用者負担軽減と適切な報酬体系の確立を国に要望している。
○障害児の利用料を元に戻せ
また、障害児の場合も国の責任が大きいとはいえ、値上げ前の9月以前の負担額に戻すには、市があと僅か2800万円上乗せすれば可能です。これは直ちに実施されるよう求めます。支援法見直しへの見解と合わせてお答え下さい。
(保健福祉局長) 子育て支援、急激な負担増を抑えるため保育料と同程度とした。国の責任での軽減を求める。
○資格証明書は保険からの排除。ただちに発行をやめよ
また、再来年発足が予定されている高齢者医療保険では、保険料を低く抑えること、年金からの天引きをやめること、資格証明書を発行しないこと、市民の声を広域連合に十分反映するしくみにすることなどを求めます。また、国民健康保険料は料率などが現行のままでも、増税により自動的に上がりますし、また今の所得割3割減額が解除されればそれだけで該当の世帯は値上げです。少なくとも去年と今年の激変緩和措置を来年度も継続することを求めます。短期証・資格証明書・無保険が1割近くも占めるというのは異常です。保険制度からの排除の象徴である資格証明書の発行はやめるべきです。名古屋などほとんど発行していない自治体もあります。この点についてご答弁下さい。
母子や障害など福祉医療についても、所得制限の強化など見直しの方向が検討されていますが、条件抜きの拡充こそが求められています。
(保健福祉局長) 滞納者に対し、きめ細かな納付相談・指導を行っている。被保険者間の公平性の上でも、特別な理由もなく滞納している人への交付はやむを得ない。
公共工事の下請け保護を
今、自民党・公明党政治のもとで、強きを助け弱気をくじく、格差拡大と競争社会、勝ち組負け組、国民市民をバラバラにする殺伐とした政治が続いています。連帯と助け合い、痛みに心を寄せ合う温かい政治への転換が求められているのではないでしょうか。しかもこの転換は狭い意味での福祉の分野だけに留まらず、社会全体にとっても切実な課題になっています。稼働年齢層の市民が、失業・無保険・無年金、保護基準以下の低賃金などという実態が広がっています。働く市民の雇用と仕事への支援、また市内中小企業・業者への仕事の確保が切実な課題になっています。
そこで次に、働く勤労市民・中小企業・業者の仕事の問題について質問します。当面、緊急雇用の拡大、労働相談窓口の開設、不安定雇用の実態調査などが必要だと考えますが、この場では、建設業などを中心に下請けへの支援策に絞って質問します。即ち、市が公共事業を発注する際、元請に対し、下請けには市内中小企業・業者を選び、そこで働く人たちの適正な賃金労働条件を確保するようにと、指導を強められることを求めます。
最近、市の設定した最低限価格以下の落札もありますが、経費節約は確かに必要なことだとしても、品質確保や下請けへのしわ寄せが心配です。下へ行くほど出血覚悟、実際赤字でやっているという例もよく聞きますが、結局、低い単価や低賃金などが、下請け孫請けへしわ寄せされているのではないでしょうか。引き受けないと次の仕事が回ってこないのです。ここへの底上げ策が必要です。京都市でも「公共工事を受注していただくにあたって」という文書で「下請は地元を利用して下さい」等と書かれており、また昨年の私の同様の質問に理財局長も「元請に要請している」との答弁でありましたから、その上に立って、更に文書の改正など元請へのいっそうの指導強化を求めます。
今、国や各自治体でこの趣旨での動きが広がっています。国土交通省の「下請け契約における代金支払いの適正化等について」という業界宛の文書では「受注者は二次以下の下請け契約の請負代金の額を明示した請負契約書を添付して発注者に提出すること」とあり、また「公共工事の入札及び契約の適正化に関する法律」には「地域の雇用と経済を支える中小建設労働者の受注機会が確保されるよう配慮するとともに賃金労働条件の確保が適切に行なわれるように努める」との全会一致の参議院付帯決議がつけられています。大阪府では、「元請下請関係適正化指導要綱」で「原価に満たない金額を請負代金とする請負契約を締結しないこと。締結後正当な理由なく代金の額を減らさないこと。支払いはできる限り現金で、手形はできる限り短く」等とあります。函館市では多くの文書を発行して、適正賃金の確保、地元雇用の拡大、地元業者の活用、資材の地元調達など指導を強め、また完了後全ての下請けに電話して工事代金支払いの点検などのフォローまでされています。地元の下請業者を守るという強い姿勢が函館方式として有名になっています。民民の関係だから関与しないということではなく、建設業法や労働法、下請代金遅延防止法など現行法規をきちんと守る姿勢を貫いておられるということが教訓であります。こういう取組は、単に仕事支援、下請け支援に留まらず、市内産品の調達、販路の拡大、購買力が大きくなることによる消費の拡大など、多面的な波及効果をもたらし、広く地域経済の底上げ、京都経済の下からの活性化にも大きく貢献するものであります。市長も要綱を作成し、地元下請や地元調達、適正賃金等を明記して元請への指導を一層強化されるよう求めます。ご答弁下さい。
〈理財局長〉 要綱に基づき、下請け、資材購入に市内中小業者選定の協力を求め、適切な労働条件確保の要請も行っている。市内中小業者への発注を基本に、分離分割発注で、数年来契約件数は市内中小業者が9割と高率。ひきつづき健全育成につとめる。
京都駅八条口前の大型商業施設開発計画について
最後に、京都駅八条口前の大型商業施設開発計画について質問します。計画によると、店舗面積45,200平米、延床面積153,000平米、店舗・食堂・映画館など、府内最大級の規模とされています。元々この地域は、開発促進のために、既存の都市計画手続きを省略したり政府保証で資金援助したりする都市再生緊急整備地域に、4年前に指定され今日に至っていますが、この指定を政府に申請したのは、市長自身でした。また市の商業集積ガイドプランでも、この地域は「店舗面積の上限は特に定めない地域」として、事実上青天井での開発を認めてきました。つまり今回の計画も、いわば市長自身が誘導し、呼び込んできたのであります。
○市内に大型店はいらない
しかし、市民の反応はいかがでしょうか。近所の商店のご主人は「死活問題だ」と言っておられます。即ち心配の第一は、すでに周辺ではヨドバシカメラやビックカメラなどの進出も計画されているなど、近隣の商圏、市内全域の商店街に決定的な影響を与えることであります。南区のある三つの商店街では、この15年間に、商店数が、それぞれ、61から32、104から65、34から14へ、などと大きく減っています。地域住民に身近に商品を提供し国民経済を支えてきた商店街が、今存亡の危機に瀕し、また消費者の立場から言えば、高齢者など、近所で物を買う所がなくなりつつあります。02年現在で、小売り事業所のうち売場面積1,500平米以上の、0.4%の店舗が年間販売額では26%を占めており、寡占化傾向が強まっています。94年から02年へ市内商店総数は、従業員10人未満は18%、3,524店も減少、一方50人以上は143から190へと53店・37%も増加しています。スーパーは99年から04年へ、売場面積は18%増加、しかし販売額は12%弱減少しています。小さい商店の減少と、大型店での売場面積の増加と売上げの減少が特徴です。供給面積が増えても、人口減少傾向で需要がそれに見合って増えなければ、客の奪い合いになるのは当然ではありませんか。すでに市内は大型店の氾濫で、大型店どうしの過当競争の状態です。最早、市内には大型店は要らないと考えますが、いかがでしょうか。まずこの点についてお答え下さい。
○車の増加による事故や環境悪化について
第二は、これも不安の声が多い項目ですが、周辺地域への交通をはじめとする環境問題であります。今でも周辺道路は車が多く、これがさらに地域の生活道路へ及ぶことは必至です。この地域は高齢者が多く、商店や住宅が並び、また保育所や学校もあり、交通事故や大気汚染など環境の悪化が心配です。道路の拡幅や交通規制などで車を誘導するとのことですが、絶対台数が増えること自体が問題なのであります。近隣周辺住民にとっては重大問題であります。この不安と心配について、市長はいかがお考えでしょうか。
○住環境、景観問題
第三は、住環境や景観上の問題です。計画されている建物の東側には昔からの住宅があり、その間隔は僅か3.5mしかありません。そこに何と31mもの建物が建てば、圧迫感や日照、防災上の問題など誰でも心配になるのは当然です。すぐ西隣には稲荷神社の御旅所、500メートル以内に世界遺産の東寺の五重の塔があります。高さや容積、建物の規模そのものが住環境や景観に大きな影響を与えます。圧迫感や日照の遮断、景観も重大な問題です。市長はいかがお考えですか、見解をお答え下さい。
○地元住民の要望に応え、計画見直しを
どういう計画であれ、利益はどこへ行くのか、商品はどこから調達されるのか、地元商業や京都経済への影響、車や人の絶対量の増加と流れ、周辺の住民や環境への影響、温暖化をはじめ環境の変化、防災等々、事前の影響評価を多面的に実施するしくみとルールが必要ではないでしょうか。この立場から、商業ガイドプランやまちづくり条例などを見直し、都市再生整備地域指定も返上すべきです。また大店立地法を、規制強化と自治体の権限拡大の方向で改正するよう政府に声を挙げるべきです。 元々この土地は8年前に当時の松下興産から政府の外郭団体である民間都市開発推進機構が買い上げ、つまり大企業の遊休地を銀行資金と政府保証でいい値で買ってやり、現在もこの推進機構が固定資産税を払い続ける、そして開発計画が決まればまた適当な値段で払い下げてやるという、政府の大銀行・大企業応援の舞台になってきた土地ですから、なおさら国民の声が採り入れられなければならないのです。ある市民が市民意見の中で書いておられます。「私は京都が大好きです。大型ビル、巨大商業施設はこれ以上は要りません。京都らしさが失われていくのが大変残念です」。6年前の地元住民アンケートでも、福祉や文化など公共的施設を望む声が多数でしたが、このアンケートは市自身が実施したものではありませんか。この結果をどう活かすのですか。市長はこの声にこそ応えるべきです。権限を活かし、事業者に対し、計画の見直しを指導されるよう求めます。お答え下さい。
〈桝本市長〉 南部創造のまちづくりの拠点として平成13年に「京都駅南口周辺地区まちづくり指針」を策定。「商業集積ガイドプラン」でも商業の高度集積拠点と位置づけ、計画はこれらの指針に沿っている。都市間競争に負けないまちづくり、にぎわい創出の起爆剤として期待される。
周辺地域との調和は重要。歴史的資源にも留意し、良好な都市環境確保のため、事業者に景観への配慮等厳しく指導している。
交通・騒音は、大店立地法に基づき関係市民の意見を十分生かして適切に手続きをすすめ、生活環境保持に努める。
この地域が京都の顔にふさわしいまちとなるよう、良好な民間開発業者の誘致・促進を図り、パートナーシップのまちづくりをすすめる。