2021年02月22日(月)
2021年2月12日本会議
No.10
●一般質問
新型コロナウイルスの影響が府民の皆さん被保険者の皆さんの命と健康、暮らしと仕事に重くのしかかっています。コロナウイルスから被保険者の命と健康を如何に守るか、広域連合として何ができるか、できることがあるかないか、あるとすればたとえ僅かな可能性であってもその道を追求すべきではないか。そういう角度と立場から質問したい。その前に、感染された方々、亡くなられた方々に対し、心からお見舞いとお悔やみを申し上げたいと思います。
府内でこれまでに感染された方々は9千人近く、亡くなられた人たちも150人近くにも及んでいます。高齢者の割合が高いと言われていますが、このうち、被保険者の皆さんはそれぞれ何人位おられるのでしょうか。やや下火傾向だとは言われるものの、未だ未だ予断を許しません。今回のコロナウイルスの特徴は、感染されてもすぐには症状が表に出ないことだと言われています。無症状の為に本人も気がつかない、従ってこの特徴が拡大の一つの要因になっている。だとすれば、症状が出て陽性と明らかになった人たちの周辺だけでなく、予めの、発見の為の、予防的な、攻めの検査拡大が必要だということではないでしょうか。世界的に見ても日本の検査数は少なすぎますし、後手後手の後追い的な検査では潜在的な拡大を防ぐことはできません。私は、未だに検査の意義を過小評価する論調は正しくないと考えます。特にリスクが高いと言われる高齢者の多い介護事業所や福祉施設、医療機関での社会的な検査が必要です。通所・入所・入院の高齢者の皆さんは勿論、スタッフの検査も必要です。特に医療機関の医師・技師、職員等、日夜、患者への治療看護は精神的ご苦労も含めまことに過酷な労働の毎日ですから定期的な検査が必要です。国もようやくその必要性を認めるようになったことは大きな前進です。この2月4日付け、厚労省の対策推進本部発出の都道府県等宛て「高齢者施設の従事者等の検査の徹底について」(要請)との文書でも、検査とその為の実施計画策定を「お願いします」とされています。
しかし一方で、緊急事態宣言はやむを得ないとしても、名前の公表など力づくで押さえ込もうとするやり方は正しくないと考えます。受け容れたくても受け入れられない医療機関の現実もありますし、コロナ以外の治療でも一杯です。公表などは、分断を生むだけです。京都市消防局の救急事案でも、受け容れ医療機関の選定に相当の時間がかかるなど搬送困難事例が多く発生しており、文字通り命にかかわる事態となっています。減収補填や、前述のスタッフへの検査等何よりも医療機関への支援が必要です。ワクチンについては時期や数量等未だ未だ不明なことが多く、一刻も早い具体化が待たれますが、一方、目の前の課題を曖昧にすることはできません。全般的に、国の予算はポストコロナに重点化され、現下の、今目の前の感染拡大防止策の為の予算額が少ないのは問題だと思います。開業医の先生たちも含め各医療機関での情報共有や連携が必要ですし、その為の体制構築はやはり行政の役割です。府においても、使用可能なベッド数の公表が大幅に変更されるなど、その使用可能の裏付けであるドクターやその他の医療スタッフの現状把握も含め、未だに現場の実態を正確に把握するのに手間取っておられると思えるような有様であります。厚生労働省の基準では、京都府も新たにステージ4になったとされています。一般の患者さんの入院先が決まらない、入院が必要なのに在宅を余儀なくされ、命にもかかわっている、医療機関は大幅な減収を余儀なくされ、もっとも最前線で奮闘されておられるスタッフの皆さんが、ただでさえ人員不足なのに、さらに長時間過密労働を強いられている過酷な現状です。私は、歴史的には、医師をはじめ医療スタッフ人数の抑制策、医療や介護にかかる費用の抑制策、そして保健所の統廃合など地域から公衆衛生機能が後退させられてきた歴代政府の責任が大変大きく、こういう方向の根本的転換が必要だと考えますが、当面の感染拡大防止に向け、以上のような取り組みが緊急に求められていると思います。
医療であれ介護であれ、社会保障としての保険ですから、保険料や一部負担金の軽減が目指されるべきだと考えますがその議論はさておいても、一方で社会保障や社会保険の役割発揮の為には医療・介護の提供体制の充実が必要不可欠であることは言うまでもありません。府民・患者・被保険者の命と健康を守る為に医療提供の現場への支援が緊急に求められています。
そこで質問は、本府広域連合として、被保険者の皆さんの、コロナの罹患であったり診断・治療、入院の必要性、その必要性の有無や程度、治療場所等々の現状について把握されておられるのかどうか、または把握できる仕組みやルートがあるのかどうか。受診抑制の実態はどうか。各医療機関の収入支出や体制、人員や機能上の現状実態はどうか。また福祉施設も種別によっては通所・入所の皆さんの中で、被保険者の占める割合が高い施設もあるでしょう。現状はどうか。或いは連合長としてそもそもそういう現状把握の必要性の認識は如何か。府や各市町村への照会はどうか。広域連合としての権限はなくとも、各自治体への連絡調整や依頼や要望提出や、或いは相談といった連携はどうか。レセプトからどんな傾向が読み取れるのか、国への要望はどうか。全国広域連合協議会に問題を投げかけてはどうか。被保険者の高齢者が救急車を要請しても受診できなかったり、入所委施設で発熱し陽性が判明していても入院できず施設に留まっておられる等々の現実について連合長の認識は如何でしょうか。広域連合の長として何ができるでしょうか。広域連合の性格や限界を承知した上でのことですが、是非積極的なご答弁を求めまして質問とします。
第二質問
一般的な保険の仕組みから言えば、被保険者は、保険料納付を要件として保険事故遭遇の場合保険者から保険給付を受ける。医療の場合、この給付を受ける為には医療提供体制の裏付け、医療へのアクセスが前提であり条件とならなければ給付を受けることができない。以前、介護保険の要支援を保険給付から外す時に介護保険生みの親と言われた当時の局長、その後大学の先生になられた方の言葉を借りると、給付が受けられなければこれは国家的サギということになります。提供体制充実の責任と役割は国や、京都府等の普通地方公共団体であることは勿論承知の上ですが、給付を保障する、アクセスを保障するというのは、正に保険者の責任であり役割です。実態と必要に応じ、国や京都府などにモノ申すべきであります。少なくとも問題提起や協議等すべきであります。また広く、予防や保健事業は本広域連合自体の活動方針の中に位置付けられているわけですから、被保険者の疾病予防、罹患予防、健診受診率向上、早期発見早期治療等々に向け、この点はもっと直接的に保険者として役割発揮を求めたいと思います。言うまでもなく、特別地方公共団体といえども、住民の福祉増進を図ることを基本とすることについては、普通団体と何ら変わるところはないはずであります。名前の通り医療に限定するとしても、その医療の範囲の中で、被保険者とそのご家族の命と健康を守る、その裏付けである医療提供体制の充実、医療へのアクセス、いつでもだれでもどこでも、安心して医療にかかれる、そういう仕組みと体制の構築、被保険者への支援、保健事業・介護予防等の推進、等々、引き続きご尽力されますよう求めます。一刻も早いコロナ収束を願って質問とします。
●「一部負担金1割負担の継続を求める」請願の紹介
政府は、後期高齢者の医療一部負担金について、現行1割負担の被保険者のうち、単身者の場合年収200万円以上、2人世帯では合計320万円の人たちを対象に、2割への引上げ方針を決定、現在開会中の国会を経て来年秋頃から施行との予定とされています。本請願は、政府に対し、この方針の撤回と現行1割負担の継続を求める、その立場からの意見書提出を本議会に求めるというものであります。私は、是非採択すべきという立場から、本請願の趣旨を説明し捕捉します。
第一に、暮らしと医療への悪影響です。対象となる被保険者数について、本府広域連合ではスグには分からないということでしたが、全国的には約20%が対象になるとのことですので、機械的に同じ割合だとすると、本府でも76,400人の被保険者が値上げになるということになります(全国370/1815=20.386%、府374,873×0.204=76,400)。単純に言うと2倍化ですが、高額療養費制度や激変緩和で実際にはそこまでには至らないとも言われてはいます。しかし、政府の推計でも一人当たり負担増は3年間の緩和期間でも年平均2万6千円、それが過ぎると3万4千円増になるとされています。しかしあくまで平均ですから、入院も含め5万円以上の負担増になる方も出てくることになるでしょう。何よりも、受診抑制が危惧されます。却って疾病の重症化を招き、それだけ治癒も遅れる困難になる等、逆に医療費の高騰にも繋がりかねません。何よりも被保険者の皆さんの命にかかわることであり健康を損ねることになるのは明らかであります。医療の診療は、物の購入の場合と異なり、受診前には負担額が分かりませんから、現行の1割負担でも受診を控えるという高齢者の方もおられます。だからこそ欧州先進国では一部負担金は原則無料とされ、お金の心配なく受診できる仕組みになっています。既に保険料を払っているのですから、そもそも一部負担金徴収は二重取りだという研究者もおられます。私も賛成です。京都市の例で言えば、後期高齢前の国保で言うと、所得割基礎額0円が50%、0から100万円迄が26%、100万から200万円迄が13%と、合計で、200万円以下が9割を占めているという実態です。この所得水準の人たちが、所得は変わらない、むしろ年金の低下傾向も続くなかで、そっくりそのまま後期高齢の被保険者になられます。消費税が上がり保険料の軽減措置も見直され、また介護保険料も、京都市で言えば、今春から基準額で年2,400円、月200円引き上げるとの市長の提案です。実質的可処分所得がどんどん低下する中での一部負担金引き上げは、結局、生活費に食い込むか、または受診抑制となるか、いずれにせよ高齢者の暮らしと医療に重大な影響を及ぼすことになるのは明らかであります。
第二に、この間の政府の方針を見るに、大きく言って、税と社会保障一体改革、全世代型社会保障等々と言われてきました。前者については、社会保障に充てるから消費税増税だとさんざん言われてきたわけすが、5%から8%、そして10%へと増税されてきたにも拘わらず、社会保障は自然増すら賄えない後退が続いています。後期高齢者医療でも保険料は上がる一部負担金も今回値上げ方針と、いわば入口でも出口でも値上げです。そもそも消費税は目的税でも特定財源でもありませんから、一般財源として歳入の一部を構成し、他の歳入と溶け合って歳出全体に充てられているだけでお金に色はついていません。総計予算主義の原則から言って、単に法律で社会保障に充てると書いただけでは、その実質的な根拠はどこにもありません。
後者の全世代型社会保障について、国は給付は高齢者・負担は現役世代と言っていますが、要介護であれ高齢者医療であれ年をとれば誰でも身体が弱ってくるのは当たり前ですし、決して本人の責任でも何でもありません。今春、介護保険料も値上げ、医療についても、既に前期2割、後期もそんなに所得が高くなくても3割が導入されています。高齢者も負担ですし、現役世代も歴史的には窓口3割化等負担増です。全世代に保険料も窓口負担も値上げを押しつけてきたのは政府自身です。特に高齢者については介護も医療も、その負担割合を減らし国民と自治体に押しつけてきました。自らの責任を棚に挙げて国民の分断を煽るようなことは政治がもっともやってはいけないことであります。
骨太方針などでは自己責任ばかりが強調され、「認知症の予防を通じて医療需要への効果が期待される」と、認知症になるのは予防が不十分だからと言わんばかりです。一昨年春の財務省資料では「介護保険利用料を原則2割、小さなリスクは自助」などと言いたい放題です。要するに風邪程度や要介護1・2ぐらいは保険から外すというのが目指す方向とのことでしょう。首相が、自助自助と強調しているのはご承知の通りであります。
そもそも後期高齢者医療保険制度自体が矛盾です。保険はリスク分散の仕組みですが、高齢者だけを被保険者とすれば、医療にかかることが多くなり保険原理が歪められることになるのは当たり前のことです。だからこそ公費投入が必然のハズですが、むしろ国がこの責任を後退させ、他の医療保険からの支援金と被保険者の保険料・一部負担金にリンクさせハネ返らせようとしているところから、結局、国民全体の負担増と保険者間の分断を生むことになるだけです。
第三に、財政の問題です。政府与党や一部のマスコミ・御用学者などは、口を開けば財政危機だ財政危機だ、高齢者が増えたから大変だ大変だと言っています。現役世代と高齢者世代との人口割合が変化し、高齢者の割合が増えているなどとよく言われますが、現役世代が扶養しなければならないのは自分たちを含む全人口であり、現役世代と人口全体の割合をとれば、1975年と2020年でそんなには変わりません。高齢化社会論はためにする議論であります。戦争するための軍事費を削り、大企業や富裕層への行き過ぎた減税を是正して名実ともに累進税化すること、証券優遇税制をやめて総合課税とすることなど、財源は十分に可能です。法人企業統計によると、資本金10億円以上大企業の利益と税金の比較では、2012年度と18年度の比較で、利益は20兆円から48兆円へ増えているのに対し、税金は7兆円から9兆円へとほとんんど変わっていません。内部留保金は4百数十兆円といわれ、人口で割ると一人当たり380万円前後にもなる勘定です。租税特別措置等により実質税負担率は名目税率より相当低くなっていると言われています。
狭義の社会保障財源で言えば、職場の社会保険料の標準報酬月額は、協会健保では135万5千円、厚生年金では635千円が天井になっていますから、それ以上の高給取の重役などは報酬月額が高い程、保険料負担割合がどんどん低くなっていきます。非正規が政策的に増やされ、特に最近は非正規ですらなく、実質的に労働者でありながら個人事業主扱いで労働法の適用外と一方的に見做されている、俗にフリーランサーなどと呼ばれる働かされ方が増えており、いずれも、大手企業での保険料事業主負担分が空洞化しています。厚労省の「社会保障制度等の国際比較について」との資料によると、ドイツフランスイギリス等と比べた社会保障財源の対GDP比でも我が国は低いだけでなく、公費と事業主負担割合が少ないのが特徴です。税財政の制度・政策を改めさえすれば財源は十分に可能です、そのことを棚に上げて財政危機だ高齢化だ社会保障にお金がかかる等一辺倒の議論は、一層の国民負担増につながるだけであり、医療と福祉の後退だけでなく、逆進性の一層の拡大など我が国の税財政構造そのものをますますイビツにするばかりです。
全国後期高齢者医療広域連合協議会も、昨年の厚生労働大臣宛の要望書の中で、窓口負担について、「必要な医療を受ける機会が確保されるよう…慎重な議論を」と言っておられました。保険料を含む財政全般について「高齢者だけの負担増とならないよう十分な対策を」と求めておられます。今回の2割値上げの線引き方針は、与党間の醜い駆け引きの結果ですし、来年参院選後の施行というのもまことに党利党略と言うほかありません。慎重な議論とも十分な対策とも、決して言えない経過でした。この協議会の一員として、また本府広域連合独自のアクションも含め、連合長は、もっと国への要望を強めるべきではありませんか。議会としましても、是非その立場で本請願を採択し声を挙げるべきことを、提案し呼びかけるものであります。以上、請願の説明とします。